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(C) SpaceX

米航空宇宙局(NASA)は4月16日、宇宙飛行士を月面へ送りこむ着陸船の開発に関するコンペの結果を発表した。このとき、規模の経済を活用するというイーロン・マスクの戦略が、またもや新たなマイルストーンを通過したことが明らかになった。

このコンペでは、3社の提案が争っていた。国防総省の常連サプライヤーであるダイネティクス(Dynetics)のほか、ジェフ・ベゾスが創設した航空宇宙会社で、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、ドレイパー研究所といった航空宇宙界を代表する組織と提携したブルーオリジン、そしてマスクのスペースXだ。

NASAは通常、この手の取り決めを結ぶときには、複数の企業を選定する。選ばれた企業が期限までに技術を提供できない事態を避けるための防衛策としてだ。しかし今回のケースでは、スペースXが契約を丸ごと獲得した。

NASAは、2020年5月に宇宙飛行士2人を国際宇宙ステーション(ISS)へ送るミッションに、有力企業のボーイングではなくスペースXを選んでいた。2021年4月23日には、NASAはまたスペースXの宇宙船を使い、さらに4人の宇宙飛行士をISSへ送った。これらにより、マスクのスペースXはすでに、NASAが最も信頼を寄せるパートナーのひとつという地位を獲得していた。

NASAがスペースXを選んだ決め手は何だろうか。基本的に、スペースXを他社と差別化している側面は、規模の経済の活用だ。28億9000万ドル規模になる今回のNASAとの契約により、スペースXは、2つの月面着陸ミッションの開発、試験、実施に関する権利を手に入れた。無人での試験飛行を実施した後、有人飛行となる第2のフライトが、2024年以降に予定されている。

しかしこの契約の価値は、あるきわめて重要な要素により、何倍にも大きくなる可能性がある。つまり、大方の予想どおりに、NASAが今回の契約後もスペースXに引き続き信頼を置きつつ、恒久的な設備のある基地を月に配備することを目的にした定期的な月面着陸ミッションを継続するのであれば、スペースXにとっての意味は非常に大きなものになる可能性があるのだ。

NASAの今回の契約は、多くの意味で、これまでにNASAが提案してきたこととは異なる、大きな新展開だ。まさにそれが、今回の決断をめぐる最大の要素であり、スペースXの最大の強みとなった点でもある。ブルーオリジンのプロジェクトは、NASAのアプロ―チに沿った3段階着陸方式のごく標準的なものだったが、この方式では部品はほとんど回収できない。ダイネティクスの提案はそれよりも革新的で再利用志向だったが、野心的ではなく、月へ送られる宇宙飛行士は数人だけとされていた。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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