「Paris 2024は、すべての人に開かれた大会に」はどう体現されるのか?

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──厳しいロックダウンが実施された一方で、テニスや自転車競技では大規模な大会が開催されています。どのようにして実現されたのでしょうか。


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全仏オープンテニスは一つの会場で開催されるため、選手・観客の感染対策が比較的容易であり、いわゆるバブル形式を採用して感染拡大防止に努めていた。今年の大会は、感染者数が減少していることもあり制限付きの有観客開催が実現した。

他方、ツールドフランスはその性質上長距離の移動を伴う大会であるため感染対策は困難であった。その中で開催実現に至った背景には、政府・経済界の強い意向があった。ツールドフランスは多くの都市を周ることからフランスの経済・社会において非常に重要なイベントであり、スポーツ産業はもちろんのこと、旅行産業や地方経済にもたらす効果が非常に大きい。

──国民の反応はいかがでしたか。

両大会共に長い歴史を持つフランスの代表的な大会であり、国民の人気が高いことから反対の声は小さかった。昨年のツールドフランス期間中は、フランス国内のCOVID-19感染状況が深刻であったことは特筆すべき点だろう。

本来であればコロナ禍に国外から選手・関係者が来仏することは、感染拡大のリスクが高まるため、国民の強い反論を巻き起こす可能性があったが、フランス国内の状況が他国と比較して深刻であったことから、海外からの来仏に対し容認的であったと考えられる。

その他の理由として、感染防止のための規制・対策が非常に厳格であり、国民に対する説明も十分なものであったことが挙げられる。

──他国のスポーツ産業ではコロナ禍において様々なイノベーションが生まれています。フランスではどのような取組みが生まれそうでしょうか。

各国のスタジアムでは顔認証・指紋認証等あらゆるテクノロジーが導入されているようだが、フランスではそのようなテクノロジーの浸透には時間がかかると考えている。なぜなら、フランス国民はプライバシーに関する懸念意識が非常に強く、個人データを活用するテクノロジーには懐疑的なことが多い。

一方で視聴体験に関するテクノロジー、特にバーチャルスポーツの領域には大きな可能性があると考えている。これはParis 2024大会で同種のテクノロジーの活用が決まっていることが大きい。

例えば自転車競技では、自宅のバイク器具とアプリを連携し、リアルタイムで選手と競うことができるようになる見込みである。同様の取組みはボート競技等でも検討されている。

Paris 2024大会は世界中のすべての人に開かれた大会とすることを目指しており、メッセージを体現する取組みとして、バーチャルスポーツの導入が積極的に検討されている。


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文=菅原政規、安西浩隆、寺尾慎吾

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