情報デトックスは散歩中に。 オイシックスCEOが「足病専門医」にハマる理由

オイシックス・ラ・大地 取締役社長髙島宏平氏(左)と足病専門病院「下北沢病院」理事長 久道勝也医師


久道医師によると散歩はまさに考えたり覚えたりするのに最適な時間。まずジムのエクササイズと違って、段差があったり、人とぶつかったりと、さまざまな刺激を受けて脳の活性化につながる。また歩行することによって、感覚器が集中したつま先などからの刺激が、脳の「海馬」にある短期記憶中枢を刺激。さらにその隣にある「扁桃核」という情報を選別する部分が連携して、必要な情報だけをサクサク記憶の棚に放り込む。

髙島氏の「思考のダイエット」は、まさに散歩時にぴったりの作業ということになる。東証一部への上場市場変更を果たすなど、オイシックス・ラ・大地のここ数年の成長は、髙島氏の散歩と無関係ではないかもしれない。

「記憶装置」としての歩行


「ソクラテスなど古代ギリシャの哲学者が、歩きながら発想していたのも有名です。また印刷物がなかった時代、膨大な情報を記憶するために、歩きながら暗記したという記録もある。通り過ぎた場所に紐付けて暗記する、記憶装置としての歩行ですよね。昔の人は歩いていると記憶しやすい脳になることを、本能的に知っていたのでしょう」(久道医師)

そうしてますます重要になってきた歩行機能を支える足の健康をキープするため、この日髙島氏は、下北沢病院で用意する「足の見えるか検診」の一部を受診。腹痛で病院を受診する人は多いが、足の痛みでわざわざ受診する人は少ないだろう。そんなふうに軽く見られがちな足のトラブルを致命傷に発展させないため、皮膚や爪、臭いのトラブルから、動脈硬化や静脈の異常、靴のサイズ、歩行バランス、可動域、筋力、骨密度など、足のさまざまなポイントをチェックする検査となっている。

久道医師による髙島氏の診断は、「靱帯もよくなって、シリアスなトラブルは見当たりません。ただし、目で見えない程度の扁平(足の裏のアーチが潰れる状態)があったので、アキレス腱のストレッチをおすすめします」だった。

扁平足は、着地のショックを吸収する際に足が必要以上に変形してしまうため、大きな足のトラブルにつながることも少なくない。アキレス腱を鍛えることで、強靱なアーチをキープすることも夢ではないそうだ。扁平足も加齢で進むことがあるというが、歩行は、人の老化とも結びつけられることが多くなった。


足病専門の病院「下北沢病院」理事長 久道勝也医師

「人生最後の三段階」は「歩けなくなる」ことから


「人生最後の三段階」。老年医学の常識として、そんな言葉があるという。まず健康寿命の衰えを告げる第一段階が、「歩けなくなる」こと。続いて「トイレに行けなくなる」のが第二段階。そして「食べられなくなる」第三段階がくると、いよいよ寿命は終焉を迎える。

つまり老化のスタートは足。ここに防波堤を作って歩けなくなることを予防すれば、健康寿命は大きく伸びると考えられている。
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取材・文=福光 恵 編集=石井節子

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