美術館に行く人は「長生きする」傾向、英大学の調査で判明

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年末年始の休暇は美術館などでアートに触れる絶好の機会といえる。アートとの触れ合いは人生を豊かにするだけでなく、長寿をもたらす効果があるという論文が、イギリスの研究者によって発表された。

学術メディア「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」に掲載された論文で、ロンドン大学のDaisy FancourtとAndrew Steptoeらは、アートが長寿をもたらす可能性を指摘した。彼らは数千人の50歳以上の英国人を対象に調査を行い、長寿と生活習慣の関連を分析した。

その結果、アートと触れ合う機会の多い人は、そうでない人に比べて寿命が長い傾向があることが確認されたという。研究者らが調査を始動したのは2004年のことで、約6700人の人々を対象に50項目に及ぶアンケート調査を2年ごとに実施した。

聞き取り項目は、家庭や職場での過ごし方から趣味や食事の内容、社会との関わりまで多岐に渡っていた。研究チームはこれらのアンケート結果と、調査対象者の健康データを比較して今回の論文を執筆したという。

聞き取り調査の開始から14年間で、約2000人の被検者が亡くなったという。大半の人は、加齢や病気が原因で亡くなっていたが別の要因も確認された。日常的に運動を行う人々の死亡率は低かった。男性のほうが女性より、死亡率は高かった。喫煙者の死亡率は非喫煙者を上回っていた。

もう一つ研究チームが注目したのは、文化的イベントへの参加率と死亡率の関係だ。14年間に及ぶ調査により、アートの愛好家はそれ以外の人々に比べ、長寿であることが確認されたという。

もちろん、ここには別の要因が絡んでいることも考えられる。アートの愛好家は裕福な場合が多く、健康管理状況も良好なケースが多い。また、高齢になるにつれて、外出の機会が減り、アートから遠ざかることも考えられる。

しかし、あらゆる要因を考慮して分析した結果、アートと関わりの深い人の死亡率は、関わりが無い人よりも低かったという。論文を執筆したFancourtとSteptoeらは、この研究結果が完璧なものではないと認めつつも、「アートとの関わりが長寿に一定の効果をもたらすことが確認できた」と述べた。

つまり、美術館や博物館などを頻繁に訪れる人々は、アートと一切関わりを持たない人々と比べて長生きできる可能性が高いことになる。これに類似した報告は、スウェーデンの研究者たちからもあがっていた。

研究チームは、アート関連の施設への訪問が、年に1回か2回であっても死亡率が14%程度下がっていたと結論づけている。さらに頻繁に訪れた場合、この数値は31%まで高まるという。

年末年始の休みに自由な時間がとれる人は、健康と長寿のために美術館や劇場、コンサートなどでアートに触れることを検討したほうが良さそうだ。

編集=上田裕資

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