いつかアマンを日本で育てたいと思っていた岡らはゼッカに、自身のアマンダリでの経験と「つくっていきたい人が中心」のホテルづくりや、旅館の哲学を再定義したい思いを強く伝えた。
それまでゼッカは岡のホテル経営の手腕を認める一方で、数字だけを追求する姿勢を好ましく思っていなかったそうだ。しかし数年後出会った岡には宿への強烈な思いと哲学、そして地域の人々への愛と情熱がみなぎっていた。「Let’s do it」ゼッカは即答だった。
宿は人なり
(Photo Yuna Yagi)
筆者はAzumiとyubuneの両方に1泊ずつ宿泊した。その中で、岡の精神を反映した印象に残ったエピソードを1つ紹介したい。
(Photo 齋藤潤一)
忘れ物とおもったメガネ。近くによってみると「sample」と書いてある。サウナに入る前のメガネフックは見落としがちなもの。地元客も入浴可能な銭湯で、サウナ好きの心をくすぶるおもてなしの精神だ。聞くと岡は関与しておらず、旅館のスタッフが自発的に行った施策だそうだ。
お金と笑顔のバランスがとれてこそ持続可能な宿になる
「宿は人なり」岡と話していると何度も出てくる言葉だ。煌びやかな装飾だけではなく、そこにこめられた哲学や思想を、ホテルで働く人が体現することによって初めてその機能が活きてくる。
宿で働く人と泊まる人とのコミュニケーションにより、ホテルへの想いや感情が生まれ、宿泊者に豊かさを与える価値になる。さらに何度もお客が来訪して深く交流していく事によって、新しい価値が生み出されてくる。Azumiは岡が描いた理想のホテルへと一歩ずつ動き始めている。
浴室とあずまやの様子(Photo Tomohiro Sakashita)
いま、豊かさは再定義されつつある。資本主義でお金や物で価値を図る傾向があった社会が終わり、心の豊かさが重視されてきている。宿を再定義する取り組みが地域の文化になり、コミュニティを形成していく。結果として地域と共に持続可能な宿になるのだ。
連載:地域経済とソーシャルイノベーション
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