Close RECOMMEND

起業家たちの「頭の中」

カバー 谷郷元昭CEO

コンピュータグラフィックスのキャラクターをYouTuberとして動画投稿を行うバーチャルユーチューバー(VTuber・ブイチューバ―)事務所「ホロライブプロダクション」を運営し、「日本発のバーチャルタレントIPで世界中のファンを熱狂させる」ことをビジョンに掲げるカバー。2020年5月にはDIMENSIONからの出資を含め、総額約7億円の資金調達も発表した。同社の急成長を牽引する代表取締役社長CEOの谷郷元昭(たにごうもとあき)氏に、起業家の素養や事業成長のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全3話中、第1話)


本物の「ビジョン」を持つ


──谷郷さんが考える、起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?

3つ挙げるとすると「ビジョン」「得意領域で戦う」「投げ出さない」の3つです。

起業家が掲げる「ビジョン」の中には、自社の未来をリアルに想像できている“本物”と、表層的な世の潮流をつぎはぎしただけの“偽物”があります。

本物の起業家かどうかは「ビジョンが本物かどうか」で見分けることができると思っています。

──偽物のビジョンでは意味が無いということですね。

ITによって起業のハードルが下がり、資金調達の環境も整ってきたため、昔に比べて簡単にサービスを作れる時代になりました。しかしだからといって、インターネットサービスを事業化するというのは、そう簡単な話ではありません。

トークだけ上手くても、妄想だけできても、事業を作ることはできません。

ユーザー心理を深く理解し、マーケットにフィットしたプロダクトを作る。そして、そのプロダクトと共に会社をスケールさせていく。この順序でしかスタートアップが成長する道は無いと思うのです。

昨今は「なんとなくマーケットがありそう」という漠然としたメッセージの元に資金調達を繰り返し、会社を大きく見せるスタートアップも見られますが、それでは最終的にはうまくいきません。

「ビジョン」はユーザーに必要とされるプロダクトを実際に作る力とセットになって、初めて本物になるのだと思います。

「自分が得意なこと」を大切に


──プロダクトを作る力を持つうえで、2つめの素養である「得意領域で戦う」ことが重要になってくるのでしょうか?

やりたいことよりも、得意なことを重視する。これがかなり重要だと考えています。

飲食店で例えると、フランス料理を作るのが上手な人が、繁盛するフランス料理店を作りますよね。スタートアップも同じで、どれだけ伸びている市場であったとしても「得意領域で戦う」ことができている会社が成功するのです。

先ほどの「ビジョン」の話とも繋がりますが、ふわっとした未来構想から逆算して、なんとなく事業を選ぶというのが一番うまくいかないパターンです。それでは、その事業が得意な競合に勝つことはできない。

「得意領域で戦う」からこそ、しっかりとした価値あるプロダクトを作って生き残り、本物の「ビジョン」を示すことができるのだと思います。

──実現したい未来から逆算して事業を構想する、というのは一見すると正しいようにも思います。「得意領域で戦う」ことの重要性を感じられた原体験が何かおありなのでしょうか?

この考えは、私自身の過去の失敗がベースになっています。

カバーを創業する前に経営していたサンゼロミニッツは最終的には売却することができたものの、経営者としては失敗したという風に自己認識しています。

サンゼロミニッツはまさに私の“ふわっと”したビジョンのもと事業を選択したケースでした。共働き世帯が増えていく中で、地域情報を共有できるサービスが求められるんじゃないか、という構想から事業を始めたのです。そのビジョン自体は優れたものだったとしても、それを実行する適任者が本当に自分なのか?という観点が欠けていました。

結果的に自分より適任者が事業を率いる方が上手くいくということで、売却に至りました。ビジョンをうまく実現する力がなければ、結果的に世の中に役立つことができないと痛感したのです。

文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ