私はいったい何が好きなのか。自分が共感する「感覚」を研ぎ澄ませ

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ビジョンを重視するのか、バリューを重視するのか。その両方を重視するのかは、組織によって違う。共感性が弱い組織には人が集まらない。その組織のビジョンにしてもバリューにしても、共感してもらえるかどうかは極めて重要だ。特に新型コロナウイルスの感染拡大で、この傾向は強化されている。

基本的に組織には、ビジョンもバリューも両方とも必要だが、比較的ビジョンが強い会社と、比較的バリューに重きを置いている会社というのがある。

いまのグローバルな大手企業やベンチャー企業の多くは、ビジョン・ドリブンだといえる。そういった企業は、成長が目的のひとつだ。成長して会社が大きくなることで社会を変えたい、というビジョンが成立する。だからこそ上場もするし、資金調達にも積極的だ。いまの日本中のベンチャーはほとんどがビジョンをもっているし、そういった企業が強いのは当たり前だろう。

一方で、組織が大きくなるとどこかでバリューが大事になる。組織の基本は人間でできている。「この組織はこういうふうな行動をしていこう」という組織文化が共有されていないと、組織としてのまとまりも弱いし、共感性も弱くなる。

下の図がこの関係を示したものだ。縦軸は、上にいけばいくほどビジョンが強い、つまりビジョンのスケールが大きい。下側はスケールが小さい。横軸は、右にいけばいくほどバリューへの共感が強い。左は共感が弱い。

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右上のBの部分は、ビジョンが強くてバリューも強い。これは先ほどのグローバル企業などが当てはまる。世界中の人をまとめるために、スケールの大きな、強いバリューが必要だ。気候変動やSDGsなど、簡単には解決できないことなどがビジョンとして目指す方向にある。さらに、グローバル企業のさまざまな人々の行動をまとめるためにバリューも必要になる。

では、これからの未来はどうなっていくのか。もちろんビジョンは引き続き重要だが、ビジョンだけでなく、バリューで生きていく人が増えているだろう。「世の中をこういうふうによくしたい」「世界を変えたい」というようなビジョンがなかったとしても、自分が面白いことや気持ちいいこと、自分の感覚でいいなと思っていることをやりたい、それができるのがハッピーだという人がいる。そういうバリュー型の人が個人レベルで増えている印象を受けている。
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text by Iriyama Akie 入山章栄 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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