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宇宙開発企業スペースXの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスクは2021年3月、同社の通信衛星事業スターリンクについて、興味深い発言をしている。

低軌道衛星を多数打ち上げて衛星コンステレーション(多数の人工衛星からなるシステム)を形成し、インターネットサービスの提供を目指すスターリンクでは、トラックや船舶、航空機に搭載できるアンテナを開発し、一定サイズの車両等にインターネットを提供することを計画していると述べたのだ。ただし、アンテナのサイズが大きすぎことから、乗用車はこの計画に含まれていないという。

マスクは、電気通信業界の創造的破壊を続けている。自社ロケットの余剰能力を利用して、一度に最大60基の衛星を打ち上げており、軌道を回っている同社衛星は現在、1321基に上る。しかも、それにかかるコストは、類似の事業と比べて格安だ。衛星周波数を管理する国際電気通信連合(ITU)と連邦通信委員会(FCC)からは、すでに約1万2000基分が承認されているほか、さらに3万基分も申請済みで審査を受けている。

スターリンクの衛星が周回するのは低軌道で、通常の衛星と比べて60倍も地球に近い。そのため、衛星通信への既存のアプローチとは異なり、地上の他社に負けないくらい高速で、ビデオゲームをプレイできるくらいレイテンシ(遅延)の小さいインターネット接続を提供できるようになる。

低軌道衛星であるため、夜間には普通の衛星よりも肉眼で視認しやすくなるが(ただし同社は太陽光の反射率をできるだけ軽減するよう努力しているようだ)、その一方でスターリンクの衛星は、これまでならとてつもなく高コストだった事業に活用できる可能性もある。

マスクが手がけるほかの全てのプロジェクトと同様に、スターリンクも、事業後期に達成されるであろう「規模の経済」を先取りし、活用している。まずは、衛星打ち上げ費用が大きく軽減できる可能性だ。これは、スペースXが進めている、再利用できる打ち上げロケットと、コストを分担しているおかげだ。

次に、地上で受信するアンテナの大きさを、当初の「UFOが付いた棒(UFO on a stick)」と揶揄されたアンテナから、一定サイズの車両に搭載可能な最新モデルまで、徐々に小型化できる見通しがある。

言うまでもないが、価格設定もそうした要素に連動する。スターリンク衛星への接続機器にかかる初期費用499ドルと月額料金99ドルを妥当と考えるのは、ほかに選択肢がないユーザーに限られるかもしれないが、規模が大きくなってくれば、料金は引き下げられる予定だ。それが実現すれば、いつかは、地球上のいたるところに敷設されている光ファイバーを通じてインターネットを提供する多数の電気通信企業と競合できるようになるだろう。

米軍も同社の構想を把握しており、スターリンクの低軌道衛星コンステレーションを、GPSに取って代わる新しいシステム基盤として利用することを検討中だ。

規模の経済やビジネスデザインの変化を加速化させようとしたところで、業界やビジネスの決まり事は変わらないと考えるのは、よくある間違いだ。衛星とその可能性について何もかも把握していると思っているのなら、考え直したほうがいいだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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