スターリンクは、数千基の小型衛星を地球低軌道に打ち上げ、地上の通信施設と連動させることで、遠隔地を含む世界中の消費者や軍・科学機関に高速インターネットを提供することを目指している。2021年2月時点のユーザー数は1万を超えており、今後は広く一般に向けてサービスを提供する予定だ。衛星の数を増やすことで、利用可能な人や地域は拡大する。
スターリンクはフランス国内4カ所で施設設置の許可を得ている。サン・ソニエ・ド・ブブロン村では、高さ3メートルのアンテナ保護ドームが9つ建設される予定だ。
しかし村民はプロジェクトを拒否。村は世界遺産のモンサンミシェルからわずか20キロメートルの場所にあり、地元の政治家や住民らはプロジェクトの影響を懸念している。
ニュースサイト「ザ・ローカル」によると、ノエミ・ブロー副村長(34)は「このプロジェクトは全く新しいものだ。こうした電波の影響については全く分かっていない」と述べた。住民や農業従事者らは、プロジェクトによって牛が出す乳の量が減ったり、住民に健康被害が出たりするのではといった不安を口にしている。
ブローは、マスクが別のプロジェクト「ニューラリンク」で、脳に埋め込んだ機器を使って人間とコンピューターを接続する技術を開発していることを引き合いに出し、住民への影響についてより多くの情報が必要だと主張。「人間の脳にチップを埋め込むことを目指していると聞くと恐ろしく感じる」と語った。また環境活動家らは、地元の生態系への影響について警鐘を鳴らしている。
村議会は細かな問題を根拠に建設をいったん阻止することに成功したが、受託業者のシパルテック(Sipartech)が再申請を行えば阻止はできない見通しだ。仏全国周波数庁(ANFR)はアンテナの建設を許可しており、安全性については、電波が空に向かって発せられることなどから問題はないとしている。
地元紙ラ・ガゼット・ド・ラ・マンシュによると、他の建設予定地には北部のグラブリーヌと南部のビルナーブドルノンがある。マスクは、光ファイバー網が整備されていることからサン・ソニエ・ド・ブブロン村を選んだと報じられている。