このプロジェクトが持ち上がったのは1年ほど前。醍醐寺には75537点の国宝、430点の重要文化財をはじめとする数多くの文化財があるが、周囲を山林に囲まれ、火災や災害からこれらの文化財をどうやって寺院の自助努力で守っていくかが課題だった。そこから、IoT人工衛星による防災監視と、宇宙に浮かぶ寺院を実現する構想が同時発生的に生まれた。
6Uサイズ(およそ20センチx10センチx30センチ)の超小型人工衛星のペイロード(打ち上げ貨物)として、半分に大日如来像と曼荼羅、もう半分に人工衛星の基本機能とIoTゲートウェイのための設備を収める。高度400km〜500kmの地球低軌道上で約1時間半をかけて地球を回り、現在地情報などはスマホアプリで確認できるようにするという。
宇宙寺院の構造(劫蘊寺公式ウェブサイトより)
2022年に試験衛星、2023年に本番衛星を打ち上げる予定で、開発は2月から開始。今後頒布される宇宙お守りや、ロケット打ち上げ成功祈願の宇宙祈祷での収益は開発や運用の資金の一部に活用される。
なぜ、宇宙に寺院が必要か 宇宙と仏教
寺の名前には院号として「天を浄める」という目的を入れ、ひとつの宇宙が生まれてなくなるまでの時間を示す「劫」と、「色・受・想・行・識」という人間の5つの構成要素を示す「蘊」という2字によって広い視野から宇宙と自己を見るという意味を込めた。自分自身の小さな存在を広い大きな視野から見て「私たちは自然の中、宇宙の中で生きている」と自覚していくということだ。
真言宗には当初から宇宙という観点が存在していた。醍醐寺の仲田順英執行統括本部長によると、弘法大師(空海)は真言宗の教えの中に宇宙のイメージを取り入れていて、曼荼羅も五重塔もそれ自体宇宙を表している。また、仏教の実践のひとつである瞑想は密教においては曼荼羅を用いて仏の世界、宇宙を思い浮かべることで行われる。