テクノロジーと信仰が合体した「アンドロイド観音」、なぜ衣をまとわないのか

アンドロイド観音 マインダー

人間に酷似した姿形や動きを再現する人工生命体である“アンドロイド”は、SFや小説、映画、漫画の世界ではしばしば描かれてきた。SF映画『ブレードランナー』に登場するレイチェルは、映画のなかでは“レプリカント”と呼ばれているが、まぎれもなくアンドロイドである。

21世紀に入って、現実世界での開発、運用もさかんになってきているが、先端技術を駆使したこの人工生命体が宗教の世界に進出し、話題となっている。京都市東山区にある名刹、高台寺と大阪大学などが協力して製作された「アンドロイド観音 マインダー」がそれだ。

宗教的礼拝の対象である“仏”に似せたロボットは、私たちに何をもたらしてくれるのだろう?現地を訪ね、アンドロイド観音の姿を拝みながら、テクノロジーと信仰が合体した“偶像”について考えた。



仏像は“キラキラ”していた

多くの日本人は「仏像」と聞いたとき、どのようなものをイメージするだろう?

仏像がこの列島に伝わった5世紀半ばまで、日本人は形をもたない精霊や祖霊を信仰していた。そこに大陸から理論的・体系的宗教、仏教ととともに、金色燦然たる仏像がもたらされたのである。

『日本書紀』によると、仏教の公的伝来は欽明天皇13年(552)、百済の聖明王が欽明天皇に釈迦仏像や経典を献じたこととされている(『上宮聖徳法王帝説』や『元興寺縁起』では欽明天皇7年[西暦538]と記されている)。初めて拝する仏の姿に、欽明天皇は、「相貌瑞厳(みかお・きらきら)し」と驚いたのだった。

仏像は慈悲や救済のシンボルとして仏教寺院に安置され、仏教信仰の中核とみなされてきた。いっぽうで彫刻としての仏像は、大陸文化の影響を受けながら発展し、時代ごとに特徴を変化させていった。その時代に有力であった宗派、あるいは優勢だった政治権力の嗜好により、流行が生み出されてきたのである。

つまり仏像は信仰の対象としても、美術彫刻としても、新たな技巧を取り入れながら、礼拝するものの欲求充足をめざしてきたということもできる。だからいま、最新のテクノロジーを駆使した仏像が生みだされても、全く不思議ではないのだ。
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文・写真=畑中章宏

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