今でこそ観光は旅行に結びついた言葉になっているが、元々は真理の光を観るという仏教用語。江戸時代の伊勢参りといった巡礼の旅は物見遊山と捉えられがちだが、非日常に身を置くことにおいて自分自身がどういう存在か改めて見つめ直す心の営みともなっている。
また、昔はお寺や神社などが身近にあり、いつでもお参りにいけたり、お墓参りに行けたりしたが、現在のグローバル社会のなかでは引越や移動も増え、仏教が遠のいてしまっている。その中で、仏教やお寺がいつでも身近に感じることができるのが宇宙寺院ではないかと考えたという。
寺は修行の場であると同時に、会合や憩いのために人々が集う場所、ランドマーク、文化施設、イベント会場でもあり、つまりは人が心を寄せる場所だ。宇宙に進出していく中で、境界なく様々な人を受け入れ、自分自身を見つめることができる場所、拠り所が宇宙にあればという思いが、この度の宇宙寺院のプロジェクトにつながった。
2月8日に初の宇宙法要 YouTubeでライブ
左:テラスペース代表北川貞大 右:総本山醍醐寺座主仲田順和猊下
今後は毎月行われる宇宙法要で宇宙の平和や、地球環境の保全、グローバルな災害疫病対策、宇宙で活動する人々の安全が祈願される。衛星の打ち上げ後には宇宙からの画像を見ながら法要を行いたいという。
全世界での新型コロナウイルス感染症の収束をメインテーマとした初の宇宙法要は2月8日10時から醍醐寺で行われ、YouTubeライブで中継される。視聴や個別祈願の申込は劫蘊寺公式ウェブサイト(https://www.gounji.space/)で受け付けている。
九重塔を模した宇宙寺院で外宇宙に乗り出す僧達を描く「天駆せよ法勝寺」で第9回創元SF短編賞を受賞した作家、八島游舷さんは「醍醐寺の宇宙寺院は非常に興味深い。仏教は非常に多様な考えを含むが、基本的に西洋科学とは異なる系統の合理性と実際性を持つ。特に狭い立場に囚われずに広い視野を持つことは仏教の重要な基本姿勢である。それは、見えないものに想像力を膨らませる文学、SFと通じる。この寺が、軌道上からの視点で、宇宙の広大さと、地球と人類の抱える諸問題を考えるきっかけとなれば有意義だ。いずれは宇宙僧も出現することだろう」と話している。