副島さんは、「子どもたちにとって学ぶことは生きること。生きていること自体が学びです。子どもの尊厳を保障し、自尊感情を育むような関わりがとても大切です」と話す。
どんな状態であっても、発達し、成長したいと願っている子どもたちに、大人は応えなければならない。
日常を奪われた子どもたちに関わるとき、大人が心がけたいことは3つあると副島さんは言う。
・「安全・安心」安心して失敗できる環境をつくる
・「選択・挑戦」自分で選び、挑戦できるようになる
・「日常・希望」希望を持つことができる
これらは入院している子どもたちだけでなく、全ての子どもに保証されるべきことだ。このような環境づくりができているだろうか。もしくは逆に、このような環境を子どもたちから奪ってはいないだろうか。私たちは自らに問うべきかもしれない。
この4月から、文部科学省による「GIGAスクール構想」が、本格的に全国でスタートした。「GIGAスクール構想」とは、義務教育の児童や生徒に1人1台のタブレットやパソコンなどの端末を配布し、教育のオンライン化や個別最適化を推進するものだ。
これまで院内学級では、タブレットやオンラインなどは導入していなかったものの、少し前の学年に戻って復習したり、もしくは自分に合った学習法を見つけて得意なことに集中して取り組んだりすることで、自信をつけて学校に戻る子どもたちも多かった。まさに「GIGAスクール構想」が目指す「個別最適化」の考え方を、何年も前から先取りして実践してきたとも言える。こうした院内学級の取り組みは、今後の学校教育にも大いに役立つはずである。
とはいえ、通常の学校ではさらに多くの子どもたちを見なければならず、ある程度の効率も考えながら、理解度が異なる子どもたちの多面的な力が引き出されるような授業を工夫しなければならない。
中央教育審議会も、「個別最適な学びと協働的な学びの実現」を重要視しているが、そのことを受けて汐見さんは次のように解説した。
「能力も関心も全く違う人間に、同じ内容を同じペースで学ばせるのは実はとても非効率的です。カリキュラムとは、本来は『履歴』のことで、その子がどのような履歴があるかを知り、その次の履歴づくりの準備をすることです。
個別的な学びをしっかりと進めながら、それぞれの意見を言葉にして出し、互いに関わり合い、学び合うことで、新しい学びが生まれます。つまり、自分を知り、相手を知ることで学びが生まれるのです」