「醸し人九平次」がブルゴーニュで探究する、日本酒とワインの可能性

KUHEIJI GEVREY-CHAMBERTIN 2017

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は3月号(1月25日発売)より、「醸し人九平次」をご紹介。非常にきめ細かく、なめらかな口当たりの1本だ。


2020年秋、政府は、19年に234億円だった日本酒の輸出額を25年には600億円に拡大するとして、日本酒を輸出重点品目に指定した。

ここ数年、日本酒はSAKEとして世界に広く知られ、酒づくりをNYやパリで行う生産者も現れた。また、長らくシャンパーニュ醸造に携わったエキスパートが日本酒づくりに乗り出した事例もまだ、記憶に新しいニュースといえるだろう。SAKEをめぐる情勢がにわかに国際化のスピードを上げるなか、いまだかつて、日本酒の生産者が本場でのワインづくりに挑んだことはなかった。このワインが現れるまで。

「醸し人九平次」で知られる萬乗醸造(愛知県)は、日本酒とワインの両方にドメーヌ(畑を保有し、その原料栽培から瓶詰めに至るまでワンストップで行う醸造所)をもつ、世界唯一の酒蔵。もともと、日本酒とワインはどちらも醸造酒であり、つくりの哲学を同じくすることから、田んぼとブドウ畑の垣根を取り払うことで、それぞれに相乗効果を生み出すのではないか。

ことに日本酒においては、テロワールとのかかわりをより強く表現していけるのではないか。そんな思いから、フランスでのワインづくりプロジェクトを13年にスタート。15年にはブルゴーニュに自社畑を取得し、初ヴィンテージとなった2017が今冬リリースされたのだ。

「この『クヘイジ ジュヴレ・シャンベルタン』は非常にきめ細かく、なめらかな口当たり。なだらかな丘の斜面で栽培されたブドウは冷たい風にあたるため程よく凝縮し、その果皮と触れることでスパイシーな香りをまといます。ジビエを使った『ショーソン』など冬の定番料理にも、非常によくあいます」と語ってくれたのは「銀座レカン」のシェフソムリエを務める近藤佑哉だ。

1万5000本にも及ぶ同店のワインコレクションは主にフランスの銘醸ワインだが、そのなかにこの「ドメーヌ・クヘイジ」のワインもラインナップ。さらには日本酒もオンリストされたのだという。

「日本とフランス、農業と醸造というボーダーを軽々と越えていく萬乗醸造のモノづくりの姿 勢に深く共 感し、このたびKUHEIJIアンバサダーに就任しました」という近藤ソムリエ。酒もワインも等しく情熱的に醸す、KUHEIJIから目が離せない。

KUHEIJI GEVREY-CHAMBERTIN 2017

容 量|750ml
酒 米|ピノ・ノワール
価 格|19800円 (「久野九平次本店 黒田庄町田高 2018」とセットで税込)
問い合わせ|萬乗醸造 (http://kuheji.co.jp
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photographs by Yuji Kanno | text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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