Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は3月号(1月24日発売)より、「ローラン・ペリエ グラン シエクル」。フレッシュさ、エレガントさ、バランスの良さというシャンパーニュの特長をすべて完璧に調和させる至極の1本だ。
とある国産焼酎を海外で広めようと苦心した人の話を聞く機会があったが、次のような言葉が印象に残った。
「日本は焼酎をほかのドリンクで“割る”と表現するように、割り算で思考するが、欧米は異なるものをブレンドしてカクテルとし、新しい価値を創造するかけ算のカルチャー。その視点の違いに気づいたとき、新たな市場と可能性が大きく拡大された」
島国である日本は単一であることを潔しとしがちだが、世界は他者を取り込み、交わることでさらなる進化を遂げてきた……と示唆に富む内容であった。
話は転じてフランスで、プレステージシャンパーニュといえば単一ヴィンテージ(同収穫年のブドウだけでつくる)が慣習となっていた1950年代に、複数のヴィンテージをブレンドすることで新たな価値を生み出したのは「ローラン・ペリエ グラン シエクル」。シャンパーニュ地方に17あるグランクリュの内、11の畑から選り抜いた白ブドウ(シャルドネ)と黒ブドウ(ピノ・ノワール)をブレンドし、さらに3カ年のヴィンテージをアッサンブラージュすることで、フレッシュさ、エレガントさ、バランスの良さというシャンパーニュの特長をすべて完璧に調和させる至極の1本を追求している。
そのボトルネックにはNo.25と記されているが、これは1959年のリリース時をNo.1として、現行モデルが25バージョン目という意味。このことをもってしても「ローラン・ペリエ グラン シエクル」がいかに希少な存在であるか推して知るべしだ。「この一本には06年、07年、08年という3カ年のヴィンテージがブレンドされているためか、まず大変にバランスが良いシャンパーニュという印象。さらにブドウ本来の味が活かされているのでフレッシュなんですが、力強さもあるので受け止める料理の幅が広いと感じています」
そう語るのは「日本料理 久丹」(東京・新富町)の店主、中島功太郎だ。コースを揚げ物で始め、中盤に鉄火巻きが登場するなど、既存の枠にとどまることのない料理が多くの食通を魅了し、ミシュラン2つ星も獲得している名店である。そしてこの中島自身も24歳で渡米し、人気和食店で研鑽を積んだ際、「日本人なのに鮨を握れないのか」と言われたことに奮起し、鮨の修業も重ねたという、異色の経歴のもち主である。異なるものと混ざり合うことで割られる(薄まる)のではなく、かけ合わせることで新しい価値を創造する、まさにアッサンブラージュの妙を味わうひと時だ。
ローラン・ペリエ グラン シエクル

容量|750ml
セパージュ|シャルドネ60%、ピノ・ノワール40%
価 格|3万5783円(箱入り、カタログ価格)
問い合わせ|サントリーお客様センター 0120-139-310(平日9:30~17:00)