ビジネス

2021.01.02 19:00

月に雑誌を30冊読破。イチロー的独創術

subsclife代表取締役 町野健

2018年、家具メーカーで日本初の家具のサブスクリプションサービスを始めたsubsclife。この9月には30億円の資金も調達。代表取締役の町野健に、アイデアの集め方や大事な指針について聞いた。


「家の中を、世界一、豊かな国へ。」というビジョンのもと、こだわりのデザイン家具を月額500円から、自由に期間を選んで利用できるサービスを提供しています。現在の取り扱いは、400ブランド、10万点以上。プランの期間を過ぎたあとは、購入、継続、返却のいずれかを選択できます。

今回の新型コロナウイルスの流行により、「家」や「家具」を含んだウェブの検索数は上昇傾向にあり、実際に弊社も法人、個人ともに業績が伸びました。日本は長らく「インテリア後進国」といわれてきましたが、コロナの影響でよい方向へと変わることを期待しています。

「いい暮らし」とは何でしょうか? 僕自身は、適切な製品や品物を、適切な量だけもっていることだと思っています。ソファでもベッドでもいい、ひとつかふたつ、本当に価値ある素敵な家具を部屋に置き、あとは適切な量を見極めて引き算すると、ストレスが減るんです。

妻にも「10万円のコートを買っていいから、いまもっている安いコートを3枚捨てなさい」というようなことをよく言っています。彼女は最初は嫌々それらを捨てるのだけど、結局困らない。むしろ1枚のよいコートは、手触りやスタイル、もちがよいだけでなく、高揚感が伴うことに気づくんです。

初めての起業は2012年2月、37歳のときで、グライダーアソシエイツという会社を立ち上げ、キュレーションマガジン「antenna*」をリリースしました。新卒で入った日本ヒューレット・パッカード勤務時代は、まさか自分にベンチャー気質があるとは思っていなかった。ただ、独立心と反骨心は小さいころからなぜかすごくあって。

非論理的で恥ずかしいですが、誕生日占いという本によると僕が生まれた日は「反骨の人」というタイトルがついていて、しかもチェ・ゲバラとドナルド・トランプと同じなんです(笑)。

その起業当時から続けているのが、毎月雑誌を30冊読むことです。男性誌、女性誌、ライフスタイル誌、海外誌の4分野をそれぞれ5〜7冊ずつ。ビジネスは違うものをかけ算しないと価値が生まれないので、自分に関係のない、必要なければ目に入らない情報にあえて触れることを心がけています。

逆にビジネス書は一切読みません。20代のときは徹底的に読んでいましたが、ある程度読んだら、書いてあることの本質はすべて同じだと気がつきました。それに僕は本を読みすぎると、その型をなぞるようなプランを考えてしまうきらいがある。

「イチロー選手はほかの選手のバットやグローブは絶対に触らない。手に重さや形が残るのが嫌だから」という話を聞いたとき、非常に腑に落ち、いまは本や人のアイデアの真似に陥らないよう注意しています。成果物のレベルが低いときもありますが、続けていれば必ずオリジナリティあるものができる。また「人真似ではないか?」という恐怖心も減ります。

ベンチャービジネスはというのはビジネスの中でも特に先手必勝です。そこで毎朝必ず、「今日から1年半後まで」の会社の未来について考える時間をつくっています。とにかく何をおいても「近道をしない」というのが僕のこだわりですね。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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