せめて月に一度くらい、可能なら二度でも三度でも、誰にも邪魔されず、両手を伸ばして深呼吸をするために滞在するのはどうだろう。
東京のホテルは、時に伝統文化や江戸の粋が活かされ、また時には、都会らしい最新鋭設備を纏うなど、それぞれが個性的に進化を遂げている。
ゆったりと異空間に身を委ね、すべてを忘れて過ごす癒しの時間。まずは週末、金曜日の夜にチェックインして、日曜の午後まで、別宅で過ごすように、自分独りで夢想に浸るのも今どきの流儀であろう。
ホテルジャーナリスト せきねきょうこ
世紀を超えて色褪せないホテルでリモートワークは究極の贅沢
忘れることのない再開業日、2012年10月。赤レンガ造りの“東京駅丸の内駅舎”が、歴史香を湛えたまま「東京ステーションホテル」として、美しく蘇った日である。駅舎の再現とホテルが織り成す“唯一無二”の存在感は、今もなお変わらずにいる。
世界的に蔓延する新型コロナ感染症拡大は、日本に於いても同様、収束の気配はまだ見えてこない。しかしそんな中、それぞれのホテルは前を向き、可能な限りの智慧や最新鋭の感染症対策を講じ、訪れるゲストに温かく安心な館内へと誘い、不安のないホテル滞在を提供している。
「東京ステーションホテル」でも感染症対策に細心の注意を払い“安心・安全の取り組み”を厳しく施している。
ヨーロピアンクラシックを謳う通り瀟洒な印象のロビー。
そんな中、たとえば人気を保っていた朝食ブッフェが、昨年夏から復活している。「アトリウム朝食ブッフェの新スタイル」としての再開は、プロの監修・指導により再開され、衛生管理の強化はもちろん、新メニューも加わり、バリエーションのある100種以上のアイテムで提供されている。
駅舎の屋根裏に位置し歴史を感じる空間のアトリウム。現在、ブッフェ朝食が再開しており、人数制限を施しながら「アトリウム朝食ブッフェの新スタイル」として提供。
ブッフェ朝食で用意される個々の料理アイテムは100種以上。料理は和・洋・中が揃い、安心安全を考慮してすべて小分けされ、卵料理は料理人がその場で作るライブキッチン。また予約のみだが、「ペントハウス アフタヌーンティー」も提供。
テレワーク、在宅勤務、リモートワークなど、今ではすっかり仕事の仕方も多様化した現在、制約の多いこの特別な社会構造の中で、ビジネスは減速せざるを得ない事態が続いている。こんな日々ゆえにホテルを利用してリモートワークをするビジネスマンも少なくはない。
そのリモートワークの場に、国指定重要文化財である東京駅直結の駅舎「東京ステーションホテル」を選んだ人は幸いである。贅沢なステイであることは承知だが、どこへ行くにも基点となる駅に直結し、また、どこにも行かず館内で仕事をするにも、駅舎や鉄道との一体感の中で過ごす滞在は非日常である。