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2021.02.07 19:00

時代を読む、東京ホテルストーリー vol.6「東京ステーションホテル」


かつてこのホテルを定宿としていた文豪が何人もいたことはご存知であろう。お気に入りの部屋に長逗留をし、作家たちは、東京駅を起点に日本全国とつながる列車の旅ロマンを背景に小説を綴っていた。江戸川乱歩、松本清張ら有名小説家を始め、幾多のホテルファンでさえも、昔から「東京ステーションホテル」を、今で言うなら、まさに“リモートワーク”の場として選んでいたのである。


多くの有名な作家たちが好んで逗留した当時、エレベーターが時代を象徴する斬新なロビーの写真。

そして時を経た今、松本清張が好んで滞在し、「点と線」の着想を得たと言われるプラットホームの見える客室の傍らには、氏の綴った小説の連載ページ・第一回の複製と、舞台となった特急「あさかぜ号」の時刻表の複製が飾られている。これだけではない、ホテル内には貴重な歴史秘話が随所に鏤められている。


パレスビュープレミアムツインの客室(52平方メートル)。客室の窓からは駅前広場とその奥に皇居外苑を望む東京ならではの景色が広がる。

また、低層階であるホテル棟には横に伸びる長い廊下があり、最長で約70m。見渡す限り延々と続く廊下の先には、何が…と小説のようにミステリーを感じるほど、突き当りが遠い。

さらに復原されたドーム内の、8方位の干支のレリーフも、再開業時に化粧直しが行われて以来、変わらずに美しい。こうした歴史を残す館内全体を見て回りたくなる人は少なくないといい、ホテルには全フロアのわかる「FLOOR GUIDE MAP」や「館内ツアーガイド」が用意されている。


タブレットを持参しながら館内を周るバーチャルツアーの様子。他に、2つ折りカラー紙媒体の「館内ツアーガイド」は図や写真とともに詳細な説明があり、ガイドを見ながらウロウロ現場を探すのも臨場感たっぷり。

後者のガイドには、1F~4Fまでのアートワークや保存物の説明、数々の歴史や謂れのポイントなどが分かり易くレジュメされ、これを持ちながら館内を散策するゲストを見かける。

そういう筆者自身、ロビー床の大理石に描かれた「クレマチス」の花言葉が、「旅人の歓び」の意味であるとこの説明書で知り、なるほど…と繊細な心遣いに息を呑んだ。この世界に何が起ころうと、ホテルは人に夢を与え、幸せを演出する“もてなし”の最前線であることに変わりはない。



ロビーラウンジ。静かな印象のラウンジだが座席はいつも埋まり、お茶の時間は入り口に列もできる人気。


ツインタイプのジュニアスィート。東京駅丸の内駅舎の中央にある客室(58平方メートル)。リビングエリア、ビジネスデスクも揃いリモートワークにもお薦め。

東京ステーションホテル
東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅丸の内南口直結
https://www.tokyostationhotel.jp/

文=せきねきょうこ

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