ニューヨーク市の賃貸物件需要が改善、ただし家賃は下落

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生してから丸1年が経過したが、米ニューヨーク市に物件を所有する家主たちは、新たな賃貸契約を次々と成約させている。家賃が下落したことで、リーズナブルな契約にサインしようとするテナントを引きつけたり、これまでの借り手をつなぎとめたりしているようだ。

不動産会社ダグラス・エリマンが最近発表したリポートによると、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズの3区では、2021年2月の成約件数が、世界金融危機からの回復期にあった2012年の記録を上回った。一方、2月における3区全体の家賃中央値(値引き後の家賃)は、前年比で少なくとも11%マイナスとなったことが示されている。

このリポートは、ニューヨーク市がちょうど日常を徐々に取り戻し始めようとしているときに発表された。レストランは3月19日から、客数を収容人数の50%に絞れば営業できるようになる。また、映画館は3月5日から、収容率25%で再び上映が可能となった。

ニューヨーク市にとって、この1年は過酷だった。2020年11月の季節調整済み失業率は11.4%で、2019年12月比で7.8%上昇した。

パンデミックが始まると、何十万人もの住民がニューヨーク市を離れ、高級住宅が並ぶ州北部のタウンや、米北東部の静かな町などの各地へと散っていった。そうした住民のうち、ニューヨークに戻る予定がある人はどのくらいいるのか、また、その影響で賃貸料が上昇していくのかどうかは、今後数カ月で明らかになるだろう。

一部の家主は、需要の回復を見越して、空室物件の公開を一時的に取りやめている。順調に回復していけば、予想よりも早く賃料を引き上げられると見込んでいるからだ。

不動産市場を調査するアーバンディグス(UrbanDigs)によると、2021年2月に家主がマンハッタンの空室物件の公開を取りやめた数は1800件以上に上っていると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が3月7日に報じている。一方、借り手側は、パンデミック直前にピークに達していた家賃の記録的高騰から解放され、その恩恵を享受している。

以下では、ダグラス・エリマンと、不動産評価コンサルタント会社ミラー・サミュエルのデータをもとに、ニューヨーク市の賃貸市場の現状を区ごとに見ていこう。

マンハッタン


もっともお得なのは非高級物件だ。家賃が前年比で最も大きく下落したのは、寝室が3つ以上のアパートだが、これはおそらく、ロックダウンを経て、借り手が以前よりも同居人の少ない生活を望んでいる兆候だと思われる。過去12カ月における家賃中央値の下落率を見ると、寝室が3つ以上のアパートは22.7%、寝室が2つのアパートは8.9%、スタジオ型(ワンルーム)アパートは19.3%となった。

賃貸の成約件数は、2020年2月と比較すると大幅に増加した。しかし、全体的な空室率は5%であり、依然として高い。比較すると、2020年は2.01%だった。

成約物件の40%以上は、家主が何らかの値引きをしている。リポートによると、契約1年目に、1カ月分かそれ以上の家賃が無料になるケースが多いようだ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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