フィンテック分野ではここ数年、「POSファイナンス」と呼ばれる融資サービスが注目を集めている。ここで言うPOSとは、ポイント・オブ・セールの略で、消費者は商品の購入時点で融資を申し込み、その場で融資を受けて、分割払いや後払いで支払いをすることになる。
このタイプの融資サービスは、若い購買者にとって魅力的であることが証明されている。フィットネス機器の「ペロトン(Peloton)」や、インタラクティブなハイテク鏡の「Mirror」、有名インテリアショップの「West Elm」などのブランドが、アファームを通じた無利息の分割払いを導入している。
アファームの昨年9 月30日までの1年間の売上高は5 億 9600 万ドルだったが、同社はまだ黒字化を果たしておらず、12ヶ月間で9700万ドルの損失を計上していた。
消費者の「過ち」を利益にはしない
しかし、投資家はアファームの成長を確信している。決済会社のワールドペイは2025年までに、後払い型がEコマース分野の決済メソッドとして、最も急速に成長すると予測している。アファームと、競合のスウェーデンのKlarnaとオーストラリアのAfterpayらの、米国での決済総額は2020年に100億ドルを突破し、5年前の約1億ドルから急拡大している。
ただし、競合たちはそれぞれ異なるビジネスモデルをとっており、Afterpayの場合は顧客の信用調査を行わず、利息を請求しないが、売上の14%を延滞料から得ている。
一方で、レヴチンは上場目論見書の中で、「消費者の過ちから利益を得る企業」の衰退を加速させていく、と誓っていた。彼はこの分野の「有害なビジネスモデル」の事例として、多額の買い物には無利息で融資するが、支払いが間に合わないと多額の延滞金が発生するクレジットカードを挙げていた。
創業までの経緯
レヴチンは長年にわたり、自身の不幸な移民としての体験を語ってきた。彼は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でコンピュータサイエンスを学んだが、本当はMIT(マサチューセッツ工科大学)に進みたかったという。
しかし、彼が通った公立高校の進路指導の教師は、MITの名前を知らなかったのだ。
レヴチンは、大学時代からいくつかの失敗したスタートアップを立ち上げた後、シリコンバレーに向かい、そこでピーター・ティールと知り合った。ティールはまず、レヴチンが開発した暗号化技術に関心を持ったという。
PayPalの創業期に彼は、当時一世を風靡した電子手帳PalmPilotなどのデバイス間で、セキュアな送金が行えるシステムを開発し、その後、詐欺師を検出するための重要なシステムの設計を支援した。
2002年にPayPalが上場した際に、レヴチンはCTOを務めていた。その頃までにPayPalは複数の資金調達ラウンドを経て、イーロン・マスクのスタートアップX.comと合併していた。その数カ月後に、eBayが15億ドルでPayPalを買収し、同社の株式の2.2%を保有していたレヴチンは3300万ドルを得て会社を離れた。
2012年、レヴチンは友人たちと新たなスタートアップのアイデアを考えていた。当時、決済会社TrialPayのCEOだったアレックス・ランベルが、フェイスブックのプロフィールでリスク査定を行うことで、Eコマースの購入資金の貸付を行うサービスを提案した。