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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

当時、誰もが振り向いたビークロスのデザインは、今もまったく色褪せない

2001年に始まった爆発的な人気映画シリーズ「ワイルド・スピード」には、トヨタ・スープラ、日産GT-R、マツダRX-7、ホンダNSXなどの日本の名車がフィーチャーされてきたけど、その一年前、宇宙映画「ミッション・トゥ・マーズ」で主演のゲーリー・シニーズがとても珍しい日本車に乗った。多くの読者の記憶には残っていないだろうけど、彼が火星に飛び立つ前のパーティに乗ってきたクルマは、いすゞ・ビークロスだった。当時は、「世界初のオフローダー」ではなく、「世界初のオフロードスター」として映画に登場したそうだ。

いすゞと聞くと、「あ〜、クルマが売れていなかったから、20年前位に乗用車部門から撤退したマイナーなメーカーだ」と思い出す人も多いんじゃないかな。確かに、2002年までビッグホーンとミューというSUVが販売されていたけど、その後は日本ではトラックとバス部門のみ販売するようになった。欧米などでは、評判の高いSUVが今も売れているけどね。

そういうマイナーな日本のカーメーカーが、どうやってハリウッド映画「ミッション・トゥ・マーズ」にクルマを登場させられたか? そう疑問を持つのは当たり前。僕もそう考えたので、1999年までいすゞのデザイン・デイレクターを務めた中村史郎に話を聞くことにした。もちろん、その年に中村氏は日産のチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任し、さらに名車を産んだことは言うまでもない。

中村さんと富士の裾野で
中村さんと富士山を望む大観山にて

「私たちが映画会社にお願いしたわけでもないんですよ。たまたま、そういう宇宙映画を作りたいということで、近未来的で変わった『いすゞビークロス・コンバーチブル・コンセプト』を使いたいと向こうから言ってきました。いすゞは、実は1999年にアメリカ市場にちょうどビークロスというSUVを出していて、そのオープンカーのコンセプトも完成したばかりでした。だから、その映画にはぴったりだったみたいですよ」と中村が語る。

ちなみに、ビークロスは1993年にコンセプトカーとして東京モーターショーでデビューを飾ったが、そのユニークで未来的なスタイリングは好評だった。また、2ドアのビッグホーンのショート・ホイールベース・シャシーを使い、同車のV6エンジンと4WDシステムを採用している。だから、オフロードでの走りが頑丈でどの悪路でも走れるということで、アメリカ「モータートレンド」のレビューでは高い評価を得た。

文=ピーター・ライオン

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