ビジネス

2021.02.07 10:30

会見は語気を強める場面も。「サステナビリティを経営の柱」とする柳井の言葉

柳井正代表取締役会長兼社長(左)とサステナビリティ部門を統括する新田幸弘執行役員(右)


こうした取り組みはすべて「ファーストリテイリング サステナビリティレポート 2021」(カラー34ページ・同社HPよりDL可能)で紹介されている。消費者目線で発信されたリポートは、消費者が雑誌を手に取るような感覚で読むことができる。消費者にメッセージを発信していくという企業の熱意、そして努力を評価したい。
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レポートの中には、世界的な思想家・経済学者ジャック・アタリと柳井の対談も掲載されている。

次世代の利益につながる服づくりを目指して


ファッション業界が地球に負荷をかける産業といわれる最大の要因は、消費サイクルの短さ(半年サイクル)、売れ残り商品や余った素材などの廃棄量の多さにある。世界的な潮流として温室効果ガス排出量削減と同様に、衣服の廃棄量を削減する動きも加速化している。昨年2月にはフランスで衣服などの売れ残り商品の廃棄を禁止する法律が制定された。ファーストリテイリングは、早くからこの問題にも向き合い、AI技術を駆使して廃棄処分ゼロを宣言している。柳井は、「一番大事なことは、自分の気に入った服を長く愛用するということ。今年買った服が去年買った服、その前に買った服、そして今後の服に合うことだ」と、上質で長く着られる服づくりの価値について触れた。長く着られる服づくりが捨てない文化を育み、サステナビリティの実現につながっていく。シンプルな企業哲学だからこそ、答えがあるように思う。

循環型経済モデルが世界のスタンダードに


世界規模で展開する企業にとって、これから重要になるのは、サステナビリティを組み込んだ経営方針だ。すでに欧州では企業文化として定着しているが、ポストコロナに向けて欧州連合(EU)は法を整備し、サステナビリティを踏まえた循環型経済(サーキュラー)モデルへの移行に向けた取組みをすでに始動させている。商品に使用する原材料などの資源採取から製造、販売、廃棄までの直線的なビジネスモデルから脱却するというのだ。ファーストリテイリングも、国内で先駆けて循環型経済モデルへ向けて大きく舵を切ったといえる。サステナビリティの取り組み方法を模索する企業や団体、地域にとって、ポストコロナの経済・社会再生へ向けて進むべき道筋のヒントがそこにあるのではないだろうか。

文=中沢弘子 編集=坂元耕二

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