ビジネス

2021.02.07

会見は語気を強める場面も。「サステナビリティを経営の柱」とする柳井の言葉

柳井正代表取締役会長兼社長(左)とサステナビリティ部門を統括する新田幸弘執行役員(右)


サステナビリティを軸としたビジネスモデル構築へ向けて


ファーストリテイリングは、「環境への配慮」に加えて、「商品と販売を通じた新たな価値創造」「サプライチェーンの人権、労働環境の尊重」、「コミュニティとの共存、共栄」「従業員の幸せ」「正しい経営」の6つの重点領域を設定し、サステナビリティを軸としたビジネスモデルの構築に向けて取り組みを推進している。だが、ここまでの道のりにかかった歳月は約20年。出発点は、社会貢献からだったと、サステナビリティ部の新田幸弘執行役員はいう。

2001年にアフガニスタン難民への衣料支援や瀬戸内オリーブ基金店頭募金の取り組みを開始。そこから20年の歳月をかけ活動を進化させ、2015年の国連・持続可能な開発目標(SDGs)採択、パリ協定「気候変動枠組条約」採択を受け、2016年にサステナビリティの実現目標を本格化させる。そして、今年2021年は「気候変動への対応が当社のサステナビリティ活動の最大のチャレンジになる」と、新田は会見で明らかにした。よく店頭や広告で目にする、自社商品のリサイクル、エコバック利用推進、梱包用段ボールの削減といった取り組みは、この環境負荷低減を実現するためのアクションに過ぎない。2021年は商品の環境負荷を削減し、資源を循環させる「サステナブルな服」をさらに拡充し、「地球への負荷をできるだけ少なくしていく」という。

CO2削減実質ゼロへコミット~循環型リサイクル商品誕生


取り組みを説明する新田

ユニクロの主要商品の一つ、ジーンズ。通常、ジーンズ1本の生産工程で使用する水量は、原料の綿の栽培を含めて推計7500~1万リットルと、成人一人の10年間の飲料水に相当する(国連欧州経済委員会UNECE公表データ)といわれ、環境への負荷が長年の問題になっている。ファーストリテイリングは2018年、従来の生産過程を見直し、仕上げ加工で使用する水量を最大99%削減(ティーカップ約1杯分の少量の水まで低減。2017、18年メンズレギュラーフィットジーンズを比較した場合)したジーンズづくりに成功し、販売にこぎつけた。

また、回収ペットボトルから再生ポリエステル素材を作り、アウターやポロシャツに使用している。ポリエステル製シャツを生産する過程で発生する二酸化炭素排出量は平均5.5キロ相当と、日本人一人当たりの年間排出量の約5.2キロ(JCCCAデータに基づいて算出)と比べても多いのだが、再生ポリエステルの場合だと、二酸化炭素排出量が最大50%減になるという。画期的な成果を次々挙げている。

さらに取り組んでいるのが、回収した服を再生させる循環型リサイクルだ。2019年に日本で回収した62万点のダウン商品をリサイクルさせ、2020年11月に「リサイクルダウンジャケット」として発売を開始。さらに世界規模に展開していくことを目指すという。また、再利用が難しい服は、固形燃料や自動車用防音材にリサイクルしている。リサイクル、リユース、リデュースと3Rの循環型サイクルを通しても、生産工場や物流などのサプライチェーンで発生する温室効果ガス排出量や資源使用量をいかに削減するかが、依然として課題になっている。柳井は、「パリ協定を尊重し、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロへコミットする」と今後の対応についても明らかにした。

また、原材料にサステナブルなものを使用するという目標も示している。サステナブルな原料とは、水、農薬、有害物質、農家の労働環境、収入などの課題が改善されている地域から調達するという意味だ。調達先に、劣悪な労働環境や児童強制労働、人権侵害などの問題点がある場合は、調達を中止し、問題解決に向けてNGOと連携する方針も打ち出している。もちろん、原料工場のトレーサビリティ、情報開示も明確化し、透明性を追求している。
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文=中沢弘子 編集=坂元耕二

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