800ページの大著にして14万部超。話題の『独学大全』発、学びの極意

800ページの大著にして14万部超の話題書『独学大全』


「学ぶこと」をあきらめられなかったすべての人へ──著者からのメッセージ


一口に独学と言っても、学校や塾や予備校に頼らない自学自習から、所属機関を持たない独立研究者の在野研究、社会人の学び直しまで、意味するところは様々である。

本書では、以上の分析からもわかる通り、「独学」の意味するところを可能な限り広く捉えている。これは冒頭に述べた独学者の定義と、独学者を援護するという本書の目的から半ば必然であった。何を目指す人であれ、またどの段階にいる人であれ、自ら学びの中に飛び込む者(独学者)を捨て置くわけにはいかなかった。

しかし、それだけでなく、知的営為を分類し無用の垣根と階梯を設けることは、益よりも害が多いと信じるからでもある。例えば「学習」と「研究」を別物だと分断するより、同じ知的営為という連続体の一部としてみなした方が得られるものは大きい。

何より、そうすることで我々は歴史の中に多くの独学の先人を見出すことができる。誰もがその名を知る知の探求者たちの仕事は見上げる程に高く大きいが、彼らの知的営為は我々のそれと確かに陸続きである。でなければ、なぜ、彼らの知ったこと考え抜いたことを、我々が今この場所で読み、我々の糧にすることができるのだろうか。

加えて、彼らもまた必ずしも恵まれなかった状況でその知的営為を続けたのだと知ることは、これから幾多の困難を越えようとする我々を勇気づけるだろう。彼らの存在が知らせているのは、それでもヒトは知ることを、学ぶことをあきらめることができなかったという事実である。

このような独学を援護する書物を書く資格が私にあるか正直疑わしい。けれども、この本を書かなければならない義務のようなものなら確かに私にあると思う。私は、今も悪戦苦闘を続ける一人の独学者としてこの本を書き上げた。

この本に書いた内容は、私が今まで続けてきた独学の経験に由来するとともに、より多くを独学の先人たちに負っている。そうして受け取ったたくさんのものを、私は次の人たちに手渡す義務があるだろう。私がもっと賢い、あるいは忍耐強い人間であったなら、おそらくまったく違った本を書いていたはずだ。しかしその本は、今の私よりもずっと賢くて忍耐強い人にしか使えないものになっていただろう。

この本は確かにあまり賢くなく、すぐに飽きるしあきらめてしまう人たちのために書かれた。独学の凡人である私には、これが精一杯である。しかし独学の達人が書いた書物よりもきっと、繰り返し挫折し、しかしあきらめきれず、また学ぶことを再開したような、独学の凡人であるあなたの役に立つだろう。

知識の大海にこぎ出ていくあなたにエールを。お互いの航海の無事を祈りつつ。Bon voyage!

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