800ページの大著にして14万部超。話題の『独学大全』発、学びの極意

800ページの大著にして14万部超の話題書『独学大全』


カーネマンらが指摘するように、人は「負けが混んでいる」と思うと、成功する確率は低いがリターンが大きそうな一発逆転の手を選びがちです。そして殆どの場合失敗し「やっぱり駄目なんだ」と落ち込むことを繰り返します。この悪循環を避けるには、<スモールステップでできることを少しずつ増やす>という、一見すると迂遠な戦略を選ぶことが必要です。

そして、こう言ってはなんですが、自信をとことん失っておられる今こそ、こうした地味でささやかな努力を開始する絶好の機会です。

では、何から始めればいいかを考えましょう。

現在の問題が「ひきこもり」の状態にあることなので、その解決へ向けた方向は「行動・活動できる領域を少しずつ拡大していく」ということになるでしょう。

そして最初の一歩は、「行動・活動できる領域」が最小のところでできることになります。つまり、<今ここから移動せずに、自分だけでできること>から始めるのです。

(1)呼び水としての筋トレをする

たとえば筋トレです。最初は「怠け者の腹筋」と呼ばれるものがおすすめです。仰向きに床に寝て、そこから膝を折り曲げ腕で抱えて、その姿勢で体を前後に揺らすだけです。最初は数回で腹筋が筋肉痛になるでしょう。

なぜ手始めに筋トレかといえば、筋肉のトレーニングは記憶学習よりも短期間で効果が実感できるので、他の学習の呼び水に使えるからです。

学習がなぜ必要なのか。それは「行動・活動できる領域を少しずつ拡大していく」ことが、長期的な問題解決であるからです。「長期的」である理由は、問題を一気に解決するうまい方策が今すぐには望めないからですが、長期的な問題解決は必ず学習を伴います。なぜなら、今すぐはできないことを、時間をかけてできるようになるには、学ぶことが必須であるからです。

どんなことであれ、自分で計画したことを毎日繰り返すことが、あなたには必要です。おそらく最初はうまくいかないことが多いでしょう。これこそが得られるものです。計画は、失敗を学習機会にします。続けていくためには、やりすぎないことです。たとえば先の腹筋なら、1日に1分間だけこれをやります。あとはこれまで通り何もせずにひたすらだらだらしていてください。そうこうするうちに「こんなくだらないことより、いくらかましなこと」がやりたくなります。

(2)「青空文庫」の音読をする

腹筋の次は、音読がよいでしょう。青空文庫は、読んで楽しい名文揃いです(昨今のアタマにある情景を文字に起こしただけの小説とはひと味違います)。そして音読は、他人に理解できる日本語を話すための基礎となるものであり(腹筋はこのための基礎トレでした)、社会生活を支える基礎技術につながっています。

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