2020年は、インフルエンサーの本質が問われた1年となった。コロナ禍に人々のSNSとの向き合い方が注目されたように、インフルエンサーたちもSNSを彩る発信者として気づいたこと、感じたことは数知れないだろう。
今後、インフルエンサーはどのように進化していくのだろうか──。
日米のインフルエンサーの決定的な違い
──日本とアメリカのインフルエンサーマーケティングの違いはありますか。
渡辺:アメリカでは、インフルエンサーが商品紹介をする際、「これは宣伝です。だけど他の誰よりもカッコよく魅せられる自信があります」と、あらかじめ広告であることを伝えます。その代わり、全力で自信満々に取り組みます。
日本に限らず、一部の人たちが、アメリカとは反対に商品紹介を「さりげなく、なんとなく」やっているのを目にします。お金稼ぎは悪いことではないと思うので、それ自体を愛をもってできるとまた伝わり方も変わってくると思います。そうすることで、企業との信頼関係も生まれます。
自分がいち企業、企業間の契約というプロフェッショナルな意識のもと行えるとより良いかもしれません。
稲木:インフルエンサーとして商品を紹介すること自体は、悪いことではないと僕も考えています。コロナ前のインフルエンサーは、どちらかというと「宣伝番長」のような存在でした。
例えばここにあるお水を、ただ単に「お水です」と紹介するのではなく、「これは〇〇なお水です」と、魅せるのがインフルエンサー。なので、インフルエンサーたちがありふれた文言でキャプションを付けても、商品を差別化できない「ただのお水」になってしまいます。
ここで大事なのが、インフルエンサーマーケティングをする際、企業にも大きな責任があるということです。キャプションの文章も、企業側が一部指定することが多いです。商品の魅せ方やタイミングに関しては、100%インフルエンサーに非がある訳ではない時もたくさんあります。語弊を恐れずに言うと、商品に問題があった場合、被害を被るのは発信者、すなわちインフルエンサーたちです。
いち時代の終焉 宣伝番長から起業家へ?
──それでは今後インフルエンサーという存在は、どのように変わると思いますか。
渡辺:若いインフルエンサーたちの中には、SNSで稼ぎたい、人脈を広げたい、いろいろ挑戦してみたいなど、いろんな気持ちを抱いていると思います。稲木さんが、前編で話していたように、これからは稼ぐことよりも、別のことが重要視される。SNSでただ何かの商品を紹介するだけで稼ぐというのは、もう無理なのかもしれないなと思います。人間力で立ち向かっていくしかない。一つの時代の終わりだという気もして、悲しいですけどね。