孤独による影響は、特定の年齢層で特に増加する。カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究チームは昨年11月、この分野での新たな研究結果を臨床精神医学ジャーナル(Journal of Clinical Psychiatry)に発表した。研究チームは、さまざまな年齢集団で孤独が生まれる心理学的・環境的要因を明らかにするため、全米の20~69歳の2843人を対象とし、2019年4月10日~5月10日にオンラインのアンケート調査を行った。
その結果、全ての年齢集団に一貫した孤独の予測因子として、共感や同情の水準が低いことや付き合いの輪が小さいこと、配偶者やパートナーがいないこと、睡眠がきちんと取れていないことが浮かび上がった。社会の中での自己効力感(自分のやる気や行動、社会的環境を制御する上で自信を持つこと)が低いことと不安の高さは、60代を除く全ての年齢層で孤独感の悪化と関連していた。また、孤独の水準は20代で最も高くなり、40代でももう一度高まり、60代が最も低かった。
調査では、キャリアを確立すると同時に人生の伴侶をみつけようと努力する時期である20代が、高いストレスとプレッシャーを抱えていることが示唆された。研究チームを率いたターニャ・ニュエン博士は「ここ10年で、多くの人がソーシャルメディアで常に自分を他者と比べ、『いいね』がついた数やフォロワーの数を気にするようになった」と述べ、「自己効力感が低いと孤独が高まるかもしれない」と続けた。また40代は、高血圧や糖尿病などの健康問題を抱えるようになる時期だ。
考えられる解決策
カリフォルニア大学の研究チームは、孤独に対する介入・予防ではライフステージに応じた問題を考慮すべきだとしている。
私は、米国のオバマ政権で医務総監を務め、次期バイデン政権でも再び同職に起用され、新型コロナウイルス対策に関わることになるビベック・マーシー博士を取材した。マーシーは新著『Together: The Healing Power of Human Connection in a Sometimes Lonely World(共にあること 時に孤独な世界での人間のつながりが持つ癒しの力)』の中で、孤独を世界にまん延する疾病と表現している。