マーシーによると、孤独は寿命の減少や心臓病・認知症・うつ病・不安の増加と関連している。ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッドらが2010年に実施した研究では、孤独の死亡率への影響が1日に15本たばこを吸うことと同等だということが分かった。
さまざまな電子機器で連絡が取りあえる現代で、労働者が孤独に悩むことは考えにくいかもしれない。このことについてマーシーに尋ねたところ、彼は次のように返答した。
「ソーシャルメディアや電子メール、テキストメッセージを通し、バーチャルな方法でつながっていれば孤独から守られるという思い込みがあるようだが、必ずしもそうとは限らない。孤独において重要なのは、人とのつながりの質だ」
「テクノロジーは、質の高いつながりを生む場合もあれば、質の高いつながりを阻害することもある。質の高い対面の交流を、質の低い交流に置き換えてしまうこともある。相手の声を聞いてその口調や感情、意図を理解できる直接や電話での会話と比べ、テキストを通して行う会話は質的な違いがある」
マーシーは、自分にとって重要な人と定期的に時間を過ごす機会を捻出し、その瞬間に集中することを推奨している。「家族での夕食時にはテクノロジーを使用しないようにしたり、携帯電話に気を取られない状況で仲の良い友人と話したりすること」とマーシー。
「2つ目は、他者への奉仕だ。これは孤独から抜け出す上で非常に有効な方法で、仕事で同僚を手伝ったり、地域でボランティアを行ったりといった行動がとれる。それによって他者とつながりを築けるだけでなく、自分は社会に価値をもたらすことができることを思い出せる。これは、自己とのつながりを強化する上で非常に有効で、役に立つものだ」
職場では、孤独のまん延により組織の業績に影響が出ることや、従業員が恥の気持ちから自分は孤独だという声を発せられないことで状況がさらに悪化することを企業が認識することが必要だとマーシーは述べている。
「ペンシルベニア大学ウォートン校経営大学院からは、働く人々の間で孤独が非常に一般的であることを示すデータが多く出されている。孤独を感じるとエンゲージメントが低下し、生産性や創造性に影響が生じる。また、他者からの印象も悪くなってしまう」
「企業のリーダーは、次の2つの点を認識するべきだ。多くの人が孤独に悩んでいるとみられること、そして孤独には人と人との交流だけでなく、企業にとって大切な生産性や創造性などの具体的成果に悪影響が生じることが、データからは示されている」