シナーはそのキャリアを、40年近く前に、料理教室の講師や料理番組の司会者としてスタートさせた。カシューナッツを使ったヴィーガン・チーズを扱った4冊目の料理本の宣伝活動を経て、シナーは2014年、「ミヨコズ・クリーマリー(Miyoko’s Creamery)」を立ち上げた。
「当時、良質なヴィーガン向け食品は手に入らなかった」と、最高経営責任者(CEO)のシナーは言う。「掛け値なしの食いしん坊だった私は、おいしくてヘルシーなヴィーガン向けの食品をつくろうと決意した」
日系移民のシナーは現在、北カリフォルニアのマリン郡西部に住んでいる。2015年に自らが創設した動物たちのサンクチュアリ「ランチョ・コンパシオン」では、牛やロバなど、70頭前後の動物たちが草を食んでいる。
シナーのブランドは現在、ナッツやオーツ、豆類からつくったバターやクリームチーズ、モツァレラチーズなどの乳製品代替食品を展開。ウォルマートやターゲットをはじめとする約2万店舗で販売している。植物由来の食品に目を向ける消費者の増加に伴い、12カ月間の推定売上は倍増し、3000万ドル以上になっている。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、方針転換せざるを得なかった」と、63歳のシナーは語る。食料品店やレストランチェーンとのコラボレーションメニューに注力していた方針を転換し、最近は、オンライン販売や消費者への直接配送などを推進しているという。「当社製品に対する需要は、これまでになく高まっている」
シナーの会社は現在170人ほどの従業員を雇っている。調査会社ピッチブックによれば、これまでに2300万ドルの資金を調達し、2019年はじめの直近ラウンドでは1100万ドルを調達した。ミヨコズ・クリーマリーはこうした資金を得て、まだ新しい業界の最前線を開拓し続けている。
「代替肉の会社を興した1990年代には、投資家を見つけるのが難しかった」とシナーは言う。「現在では、植物由来食品ビジネスに投資したい人たちが、ドアの前で列をなしている。植物由来食品こそが未来だという見方が広がり始めている」