新型コロナウイルスの世界的パンデミックのなか、アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルの第2四半期の業績は、売り上げが4社で総額2050億ドル、純利益が340億ドルという驚異的なものだった。
一方で、同期の米国の国内総生産(GDP)は年率換算で33%減。そして、何週間もの間、モバイル取引アプリ「ロビンフッド」を通じて投機的なコールオプションに大金を注ぎ込んでいた前出のチャンネルに集う若き会員たちは、アドレナリン全開の興奮が歓喜に変わる体験をした。
前日、アップルの利益が予想を上回ったばかりか、1対4の株式分割も発表され、より多くの小口個人投資家が同社株に群がっていた。そして31日金曜日の取引が始まると、新参者である彼らの多くが保有するアップルとアマゾンのコールオプションは、ラスベガスのスロットマシンが「777」を出したかのような儲けを出した。
テックの巨人である両社の市場価値が、合計で2500億ドルも増えたのだ。8月3日月曜日、ナスダック指数は最高値を更新した。
2月以降、パンデミックの重圧で世界経済が破綻するなか、米国では景気刺激策として給付された1200ドルを元手に何百万人もの初心者がシリコンバレーの新興企業「ロビンフッド」を介して株取引を始めた。同社はスマホフレンドリーなディスカウントブローカーで、13年にブラッドミア・テネブ(33)とベイジュ・バット(35)によって創業された。
2人の若き起業家は、フェイスブックによって有名になったやり方で、急成長スタートアップを築いた。すなわち、「無料で、使いやすく、中毒性のあるアプリ」をつくったのだ。
しかも、富める者から盗み、貧しき者に与えたあの伝説の無法者、ロビンフッドにちなんだ社名を持つ同社は、社会の不公平や偏見に敏感で、資本主義に嫌気がさしたミレニアル世代の人間でも支持したくなるような使命を掲げていた。「万人のための金融の民主化」がそれだ。
新型コロナウイルスと政府の給付金の流入は、ロビンフッドに予期せぬ恩恵をもたらした。同社では1月以来、30%増に相当する300万を超える口座が新たに開設され、収益は今年、前年比250%増の7億ドルに達する見込みだ。
1975年5月1日に証券会社の委託手数料が自由化されてディスカウントブローカーが誕生して以来、個人投資家向け株式市場でロビンフッドほど破壊的な変革をもたらした勢力はない。同社の手数料無料取引は、いまやTDアメリトレードやフィデリティ、シュワブ、バンガード、メリルリンチなどの証券会社でも標準仕様になっている。
そして、ロビンフッドの愉快なトレーダーたちはいま、市場を動かしている。イーロン・マスクのテスラや大麻事業のコングロマリットのクロノス、カジノ事業者のペン・ナショナル・ゲーミングまでもが、彼らのお気に入りの銘柄となっては日々乱高下しているのだ。
ゴールドマン・サックスによると、ロビンフッドが開拓したオプション投機家によって、個別株式オプションの取引高が初めて普通株式を上回り、今年は前代未聞の129%増を記録している。