ビジネス

2020.12.18

ヒットする「D2Cブランド」の共通点 GREEN SPOONとMakuakeの考え

北原成憲(左)、石川達也(右)

自社で企画・製造した商品を自社サイトで直接販売する「D2Cブランド」はアパレルやスキンケア、ヘアケア、フードなど、様々な領域で続々と立ち上がっている。

私たちマクアケが手掛ける応援購入サービス「Makuake」でも、新たなD2Cブランドが日々誕生し、大ヒットする商品も出てきている。

D2Cブランド全盛のいま、ユーザーから求められるD2Cブランドに必要なことは何か。

今回は、ヒットするD2Cブランドのポイントを、定額制のパーソナルスムージー「GREEN SPOON」から読み解く。GREEN SPOONは2020年3月の発売から半年間で累計13万個を販売。若い世代の女性を中心に人気を集めるブランドだ。最近ではパーソナルスープの販売も開始した。

マクアケR&Dプロデューサー・クリエイティブディレクターであり、タグラインの刷新やテレビCMなどマクアケ自体のクリエイティブディレクション務める北原成憲と、GREEN SPOONのクリエイティブディレクターを務めるBSPK incファウンダーの石川達也氏が語るヒットするD2Cブランドのポイントとは。

クリエイティブディレクションのポイントやヒットの法則性を導き出していく。

「パーソナルスムージー」という名前に行き着いたワケ


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北原:石川さんはGREEN SPOONのクリエイティブも手掛けられていますが、どのようにして“パーソナルスムージー”という言葉を定義したのでしょうか?

石川:自分は普段、ブランディングを手掛けるときは、クライアントに必ず大量の質問項目をバーっと書き出して、それに答えてもらう「Questionnaire」というものを一番はじめに行うのですが、今回、代表取締役CEOの田邊友則さんにもお願いしました。

これはブランドのことを知るという“直接的な効果”もあるのですが、それ以外にもブランドの創業者と信頼関係を築くことができるという“副次的な効果”もあります。

何の関係性もない人に「あなたのブランドはこうした方がいいんじゃないか?」と言われたくないじゃないですか。深く耳を傾けることで距離感が縮まり、それが信頼感の醸成に繋がっていく。田邊さんとは打ち合わせのときから、お互いにいろんな話をして信頼関係を築いていきました。

起点になったのは、そのブランドが何のために存在しているのか、どんな課題を解決しているのかを考えることです。すでに世の中には大量のスムージーがたくさんある中で、なぜGREEN SPOONが必要なのか。その答えのひとつが、「人」です。

みんな健康になりたくて、スムージーを飲んでいると思うんです。でも、コンビニにあるような安いスムージーは気休めにしかならないし、コールドプレスジュースのような高いものは続けることが難しい。

しかも、そのどちらも「自分」ではなく、一般的な「誰か」の健康のためにつくられている。でも、GREEN SPOONは違います。ひとりひとりの生活習慣やカラダの悩みからパーソナライズドしてスムージーを提案していく「あなた」のためのブランドなんです。

本当に意味があるのか分からない、食に関する世の中の不透明な健康を透明に変えていく。人をしっかりと見つめ、健康な食生活を提供していくウェルネスブランド。それがこのブランドの本質的な価値だと思いました。

こうして、「人をど真ん中に据えたブランド」という大きなクリエイティブの方向性が生まれました。この時点で、数あるスムージーブランドの中で、異質になることは想像できます。

そこから、“パーソナルスムージー”という言葉でブランドを定義していきました。パッケージでは、一般的なスムージーのように野菜や果物はあえて描かず、GREEN SPOONのコンセプトである“人”を表現の中心に据えています。

コンセプトがユニークでも、見た目が他の製品と一緒だと、意味がないんです。また、“パーソナライズドスムージー”のような言葉にしてしまうと、あまりに合理的なイメージがあってミスリードを生む可能性もある。

一人ひとりのスムージーという意味をこめて「パーソナルスムージー」にしました。世の中に存在しなかった、新しいカテゴリーを作っていく言葉です。

分かりやすく言葉になったり、デザインになったり、表層的に見えるところに行き着くまでに多くのプロセスを踏んでいます。田邊さんはすごく良い意味で細かくて、お互いにスッキリするまでとことん話し合い、突き詰めていきました。
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文=Makuake

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