創業者の言葉を翻訳し、ブランドの羅針盤をつくる
北原:先ほど石川さんからあったように、クリエイティブディレクターの大切な仕事は創業者と対話することだと思います。
そのブランドが何のために存在し、何を解決するのか。ブランドの存在目的を創業者は心の中で理解しているからこそ、創業者と対話し、創業者の言葉を紡いだり、翻訳してあげたりするのがクリエイティブディレクターの最初の仕事だと思っています。
歴史ある企業ですと、社史や創業者の想いがわかる歴史資料などを徹底的に読み込むことから始め、擬似的に創業者と対話する努力が必要です。
創業者は立ち上げたブランドの思想、目指すべき方向性がはっきり見えていますが、それを翻訳して共通言語を作らなければ、社内のメンバー、ひいてはユーザー、社会がブランドに付いていけなくなってしまいます。
だからこそ、マクアケも3人の創業者を中心に徹底的に対話して、思想を言語化した結果、今のビジョン、ミッションが生まれました。
マクアケのビジョン:生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきべものが残る世界の実現
マクアケのミッション:世界をつなぎ、アタラシイを創る
そうした共通言語が出来ると、ブランドの羅針盤になるんですよね。ブランドを作り上げていく上で何か迷ったことがあれば、そこに立ち返ってやるべきことを整理していけばいい。「その選択はビジョンの実現に向かえている選択なのか」。その考えがあることで迷わなくなります。
「ブランドとは何か?」について様々な方とよく議論をするのですが、最も共感した定義が、ブランドとは「世の中に刻まれた記憶」であるということです。
例えば、「ブランドとは何か?」を聞かれて、ブランドロゴや商品自体のことを指される方もいると思いますが、誰もが知るブランドのロゴや商品がリニューアルすることよりも、人々の記憶から「そのブランドの記憶」自体がなくなってしまうことの方が事業に深刻なダメージを及ぼすでしょう。皆、そのブランドを“ブランド”と認識ができないわけですから。
なので、ブランドの羅針盤を掲げ「世の中にいかに良い記憶を積み重ねていくか」という活動がブランディングの根幹ではないかと思っています。
ビジョン、ミッションというみんなが付いていきたくなる羅針盤を掲げて、そこに紐づいた良い記憶が世の中に積み上がっていくとブランドができる。創業者と徹底的に話して羅針盤を定め、その羅針盤とともにみんなで良い思い出をつくっていく。それこそがブランドなんだと思います。
クリエイティブディレクターには、創業者との対話から羅針盤を作り、ブランドと、組織や社会を繋いで良い記憶を積み重ねていくディレクションが求められます。
石川:ブランドの言葉は、2人を代弁する必要があると思っていて。それは、「社会」と「創業者」。どちらかが抜けていてもダメなんです。
しかも、「世界にたくさんの愛を生み出します」みたいに抽象的すぎると意味がない。難しいのですが、これはすごく大事な作業だと僕も思います。GREEN SPOONでも、すべてを明文化して、何度も修正し、いまでも一緒に更新しつづけています。