経済・社会

2020.11.27 07:30

「単独親権は違憲」提訴で離婚専門弁護士に聞いた。親権制度、日本は特殊?

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問題点もある? 共同親権制度導入


少子化や共働き世帯の増加、父親の育児参加など、子どもの養育を取り巻く環境は大きく変わってきています。
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これらを背景に離婚時の子供に関する問題は深刻化を増し、一方親の連れ去り、訴訟で虚偽のDVを訴える行為など、問題のある行動は現実に増えつつあります。

このような事態を打開するためにも、共同親権制度への移行が求められているという声がある一方、共同親権制度となったとしても父母間の対立は根本的には緩和できず、共同での養育の意思決定は実際には容易ではないため、争いが日常化することでかえって問題が悪化するという意見もあります。
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また、共同親権制度のデメリットとしてDV(ドメスティックバイオレンス)、児童虐待などの問題はけっして解消されないという点も指摘されています。

つまり共同親権の場合は、子どもに関する重要事項は父母の間で協議し決定するプロセスが必要となるため、たとえ離婚しても接点を持たざるを得ず、DVなどの被害の継続や拡大につながりかねないと懸念されているのです。

「子の利益」に資する法制度を


上記のような問題点を踏まえ、共同親権制度の是非は「子の利益」に適うかどうかを軸として、今後、実際に導入された場合のメリット・デメリットについて具体的に議論を重ねるべきでしょう。

実務的な観点からすると、現段階では、共同親権制度のデメリットは大きいと感じざるを得ません。離婚して親権を取っても、DVやモラハラ傾向の相手は必要以上に干渉してきますし、片方の精神的負担が大きいと危惧せざるを得ないからです。

しかしながら、今後、議論を重ねたうえで充実した法制度が整備されれば、「子の利益」に資する可能性も大いにあります。

父親と母親に愛されて育ったという記憶は、子供にとって自己肯定感を高め、その後の人生に多大なる影響を与えることは紛れもない事実です。

たとえ離婚したとしても、父親と母親として子供を愛することは可能です。

共同親権制度は、その意味で、子の利益に貢献する可能性を多いに秘めた制度だと思います。


フェリーチェ法律事務所所長 後藤千絵氏

文=後藤千絵 編集=石井節子

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