ところで、トランプ大統領を支持する「福音派クリスチャン」たちがトランプ政権誕生時に語った言葉を借りて言うと、バイデン大統領が誕生するのはまさに「神の計画」だ。キリスト教徒が信じるイエス・キリストは、社会的に忌み嫌われた人々、傷ついた人々、難民や社会で最も弱く小さいとされる人々を愛した。
白人至上主義者たちを奮い立たせ、平和的デモに暴力をふるってきたトランプ大統領はイエスとは全く逆のキャラクターだが、今回の選挙でも明らかであるように、「福音派クリスチャン」と名乗る人たちが、トランプ大統領を大いに支持している。結局のところ、そのような人たちは、信仰より権力重視なのだろう。その証拠に、コロナ禍よりアメリカ政府が打ち出した中小企業への経済支援では、なぜかそのような数々の教会も恩恵を受けている。
痛みの分かるリーダーが求められている
アメリカ社会の現状に目を向けると、トラウマを抱える人々は増大している。
トランプ政権が誕生した2017年から2018年にかけて、メキシコとの国境で引き離された難民の子どもたちのうち454人が未だ保護者と再会できず、子どもたちが移民・関税局の管理下で性的、精神的虐待に遭っていることも報道されている。また、新型コロナウイルスにより亡くなった約25万人とその家族、自粛体制の中で急増するDVや性暴力の被害者たち。こうした現状を変えていくためにも、まずは心の痛みを抱える人たちの存在に気づくことができてこそである。
痛みのわかるリーダーが求められている世の中の状況が、今回の大統領選の結果に影響を及ぼしたのではないかと思わずにはいられない。
バイデン氏に対する意見も多様だけれど、少なくとも、心の痛みがわかる人がリーダーになることは、社会にとって悪いとは思わない。
連載:社会的マイノリティの眼差し
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