コロナ禍で定期健診の後回しが急増 小児科の予防接種は「必要至急」

Jose Luis Pelaez Inc /Getty Images

4年前、長男が小児白血病と診断された。その時は、目の前の治療のことだけで精一杯で、退院した後の話など想像もつかず、そのことに思いを馳せることもできなかった。

全ての治療が終了して、退院した2018年11月、今度は、長男は水疱瘡に罹患した。そして、また2週間の入院を余儀なくされた。

水疱瘡で入院というのは、あまり聞かないのではないだろうか? 通常であれば、的確な時期に予防接種をしているので、水疱瘡に罹患したとしても、入院するほど重症化することは少ない。

なぜ重症化するかというと、小児白血病の抗がん剤治療により、それまで受けていた予防接種の抗体の一部が消えてしまうからだ。長男の場合は、水疱瘡の抗体が消失しており、再接種をする前に、運悪く罹患してしまったのだ。

私には3人息子がいるので、先に罹患した次男と三男のときの経験を踏まえて考えていたが、長男の状況は、そのはるか上をいき、抗ウイルス剤を点滴してもなかなか解熱しない。さらには、頭部から足裏まで至る所に発疹が現れ、口の中や耳の中にまで及んでいた。

それだけでなく、驚くべきは、長男の罹患をきっかけに、一度罹患したはずの三男が、再び水疱瘡に感染したことだ。人に感染させる力が非常に強く、長男がいわゆるスーパースプレッターであったことがよくわかる事例だった。

そして、そのとき私は、初めてワクチンの大切さを身にしみて感じた。

まだ水疱瘡の家族内感染で済んだが、これがもっと重篤な状況になるような病気だったら、本人がしんどいのはもちろんだが、もし家族以外の誰かにうつしてしまった場合、どう責任を取ったらいのかと痛切に思った。

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コロナ禍による小児科への受診びかえ


このときの経験により、そもそも小児がん治療(骨髄移植だけでなく抗がん剤治療も)によってワクチンの効果が消失してしまうこと、そしてワクチン再接種の助成が自治体によってバラバラで不平等が出ていることなどを、過去にこのコラムでも取り上げた。

これらの経験から、私の運営している一般社団チャーミングケアでは、地域限定(大阪府、兵庫県)ではあるが、小児がん治療によって失われた抗体のワクチン再接種に関して、独自の助成活動を行っている。
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文=石嶋瑞穂

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