ジュネーブ合意宣言は、「女性の権利向上を推進し、家族のつながりを強化する」よう国々に呼びかける一方で、「中絶について国際的に認められた権利はない」と主張している。
この宣言を共同提案したのは、米国、エジプト、ハンガリー、インドネシア、ブラジル、ウガンダだ。
米国を除けば、ジョージタウン大学が発表する「女性・平和・安全保障指数」(女性の地位をさまざまな尺度で測定した指標)で、95位以内にランクインしている国はひとつもない。
それ以外に署名した国々は、サウジアラビア、イラク、リビア、スーダン、バーレーン、アラブ首長国連邦、コンゴ民主共和国など。これらの国々はどれも、英エコノミスト誌が2019年にまとめた「民主主義指数(Democracy Index)」で、独裁体制に分類されている。
ジュネーブ合意宣言は、男性と女性はともに公民権、政治的権利、経済的権利、ならびに機会を有するべきだとしながらも、その一方で、「いかなる場合においても、家族計画の手段として中絶が促進されるべきではない」とも書かれている。
また、「国際政治における」国家主権も強く打ち出されている。これは、米国務長官マイク・ポンペオが、「米国の管轄権」について国際社会から追及されたときに強調した点だ(ポンペオは9月、アフガニスタンにおいて米兵の戦争犯罪を捜査する国際刑事裁判所[ICC]の検察官に制裁を科すと発表。国際社会から激しい非難を浴びると、「自国民への主権侵害」だと反発していた)。
トランプ政権は2019年以降、ジュネーブ合意宣言への支持を獲得しようと国連加盟国に働きかけてきた。2019年時点で署名していたのは約25カ国にとどまり、なかなか進展がみられなかったことが、英ガーディアン紙が入手したメモから明らかになっている。
米国が作成したメモには、「2020年に宣言が行われるときには、より多くの国々が署名することを私たちは望んでいる。それにより、多国間に共通する優先事項が達成されるだろう」と書かれていた。
ジュネーブ合意宣言が掲げる主題は、ポンペオが2019年に設置した「不可侵の権利に関する委員会(commission on unalienable rights)」が目指すことと類似している。この委員会は、米国の人権政策を、国家主権・財産権・宗教の自由を謳った独立宣言と結びつけることを提唱するのが目的だ。
ポンペオはジュネーブ合意宣言に署名した際に、「トランプ大統領の指揮の下、米国は、いついかなる場所でも人命の尊厳を擁護してきた。これほどの働きをした大統領は歴史上ひとりもいない」と述べた。
今回の署名について、アムネスティ・インターナショナルUSAでジェンダー・セクシュアリティ・アイデンティティに関するプログラムを率いるディレクターのタラ・デマント(Tarah Demant)はフォーブスに対して次のように述べた。
「米国は本日、さらに大きく一歩後退した。人々の健康と命を率先して危険にさらそうとする国々の仲間入りを果たしたからだ。米国の姿勢は、人権と、何十年にも及ぶ保健衛生研究に反している。人々は、自らの人生を精いっぱい生きるべきであり、政府から指図されるいわれはない」