──なるほど。そうしたメッセージを発信する場として、SNSを選んだのはなぜですか?
漫画や動画って、タイムラインに出てくるとつい見ちゃうじゃないですか。自分で調べようと思わなくても自然な形で情報に触れてほしかったんです。ウィンドウショッピングのような感覚でコンテンツを見てもらって共感してもらえればさらに多くの人に発信を見てもらえる。そう思って、SNSを利用した分散型メディアにしようと考えました。
漫画や動画をつい見てしまったときに、「自分にまったく関係ない話でもないな」と思うような軽いボールを、1000回でも1万回でも投げています。
そうすることで、人々が何となく抱えている、モヤモヤしているけれども「まぁいっか」と黙認されてしまっているセクシュアリティやジェンダーの問題について、一人でも多くの人にピンと来てもらいたいんですよね。
子供たちに多様なロールモデルを
──社会を変えたいと考えたときに、社会の制度や法律を変えるという方法もあったと思います。そうした手段を選ばなかったのはなぜですか?
「政治」と聞くだけで、難しそうだから考えたくないと感じたり、「デモに参加する」のはハードルが高いと感じてしまったり。そういう人はたくさんいると思います。
社会の仕組みを根本から変えていく活動ももちろん大事だと思いますが、私たちは私たちの得意な発信の分野で、「面倒だし、どっちでもいいか」と考えている多くの人たちに向けて、もっと簡単にできる「意思表示の場」をつくりたかったんです。
「こういう問題があるんだ」と気づき、関心を持ってもらう「第一歩」のきっかけになる。
それは最もと言っていいほど難しくもあり、重要なことでもあります。SNSという超受動的なメディアを使うことで、じわじわと、徐々に社会全体のカラーを変えていくことができると考えています。