特別セッションには「モヤモヤさまぁ〜ず2」や「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」など、数々のヒット番組を手がけるテレビ東京の名物プロデューサー「伊藤P」こと、伊藤隆行が登壇。番組誕生秘話から企画の考え方など、業界では小規模といわれる局からヒットを生み出し続ける、伊藤ならではの思考を垣間見れるトークが繰り広げられた。
「小さくても勝つ」をテーマに、セッションの様子と、イベント終了後に行ったインタビューの内容をお届けする。
新卒でテレビ東京に入社し、編成局勤務を経て制作局に異動となる。伊藤は毎週の会議に企画をもって行っては「もういい、面白くない」と話すら聞いてもらえない日々を3年ほど送っていた。
そんな中、彼の仕事術の原点となる上司の言葉と出会う。
「お前は自分のことを天才だと思うか?思わないならやめちまえ。自分の中の1%は天才だと思って仕事をしないといけない。でも残りの99%は凡人であれ」
天才になろうと思って天才になれる人間はいない。ならば凡人なりに、自分だけがもつ記憶や体験を生かして、ものをつくるしかない──。この気づきから、伊藤は入社3年目で初めて、自分の企画が採用され、グルメ番組を制作することになる。
「自分にしかない一瞬の記憶が発展して結果を生むという体験が、自分の中の企画術の1歩目でした。そして99%凡人である誰もが、ヒントをもっているのではないかという考えに到達したのです」
「99%の凡人」であることを生かして、「1%の天才」を自らの中に見出す。これは「スモール」が「ジャイアンツ」となる過程と共通するものがある。凡人と天才が並存する中に、自らのの可能性を信じる伊藤は、全国のスモール・ジャイアンツに向けてなにを語るのだろうか。
──かつてテレビ東京は「振り向けばテレビ東京」と揶揄され、視聴率では東京の民放局でいちばん後ろを走っていた。いわば「スモール」だったわけですが、伊藤さんはそんな中で番組を作るにあたり、勝つためにどのような戦略をもっていたのでしょう。
1位を取りたくないと言ったら嘘になりますけど、テレビ東京はそもそも1位を狙いにいってないんです。広く浅くより、狭く深く楽しんでくれるお客さんに「刺し」にいってるんです。
そしてそのお客さんの家族など、周囲の人にも「これ面白いね」と言ってもらえるようなひとつで二山を取りにいくような番組づくりをしています。