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ダイソー創業者の矢野博丈氏(写真提供:日本経営合理化協会)

利益一円でも売る商法で、売上4757億円、世界28の国と地域に5500店舗を展開する100円ショップ「ダイソー」。目標やノルマ、予算一切なしという同社の経営の根底にある「運」と最前線で働くことの大切さについて、創業者の矢野博丈氏にForbes JAPAN Web編集長の谷本有香が聞いた。

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よく働き、運をつくる


矢野博丈氏(以下、矢野):僕が起業したのは、池田勇人や田中角栄の時代でした。当初、銀行やいろんなコンサルタントの人から「この商売は止めたほうがいい。100円全部利益だとしても、どうやって場所代や商品代、運送費や人件費を払えるんだ? できっこない、儲かるはずないじゃないか」とよく言われました。

僕もそうだなと思いながら、でも有り難いことに運も能力もないと分かっていたので、一生懸命働いて、ちょろっと儲けて食っていければいいかなと思って。

谷本有香(以下、谷本):それで世界ナンバーワンのアントレプレナーが選ばれる表彰制度、「EY World Entrepreneur Of The Year」で優勝され、日本代表になられました。日本代表だからといって、世界の名だたる起業家たちと伍して戦える方はすごく少ないんですよ。その中で優勝候補とさえ言われていたのは本当にすごいです。

世界から「100円の商品から利益なんて出るはずがない。どうやっているんだ?」と注目されたわけです。しかも数字的なことだけでなく、矢野さんの経営哲学が今の時勢の経営者たちに刺さったということだと思うんですね。

お金を稼がせていただき、ありがとう。お客さんが来てくれてありがとう。と思っている人も、それが当たり前になったら普通は天狗になっちゃうと思うんですよ。ダイソーは今、1時間あたりの売上が1億2000万円。そんなお店になったら、普通の経営者は「ありがとう」と思わなくなると思うんです。それなのに、今も「ありがとう」とずっと思えるのはなぜですか?

矢野:やっぱり自分が恵まれなかったおかげで、有り難いんですよ。その原体験だけですね。

いつ潰れるか分からないと今でも思っています。だって人間、今日の帰りに車が衝突して死ぬかもしれないし、30分後に地震が起きる可能性もゼロではないですよね。本当は常に崖っぷちを歩いているわけですよ。その中で生きさせてもらっているのは、有り難いことなんです。

谷本:お客様に対してだけでなく、全てのことに対して感謝の気持ちを持ち続けることが大切なんですね。経営者として長く成功し続けていらっしゃることに対して、他に大切にしたほうが良いこと、要素はありますか?

矢野:僕は大した経営者じゃないと思っているので、よく分かりません。ただ、ものすごく働きました。働くことが大好きです。朝5〜6時から夜中の1〜2時まで毎日働いていたので、昭和18年生まれでよく働く人のランキングを作ったら、10番以内には入っていると思います。

文=筒井智子

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