従業員に出社再開を強いてはいけない理由

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米コンサルティング企業エデルマンが英米など7か国で実施したオンラインアンケート調査では、自分の会社が従業員を守る手段を講じていると感じている人の割合が49%、自社の最高経営責任者(CEO)が新型コロナウイルスに関して「素晴らしい対応をしている」と感じる従業員に至ってはわずか29%という結果となった。さらに、オフィスへの出社を安全に再開できると感じている人は50%だった。

JPモルガン・チェース従業員の多くは、米ニューヨークの自社ビル内で新型コロナウイルス陽性者が1人出たことを、メディア報道で初めて知った。同社幹部は、感染者が出た場合には同じフロアに勤務する従業員や濃厚接触のあった従業員に対してのみ通知するのが同社のポリシーだと説明。ゴールドマン・サックスも同様の方針を取り、感染者と同じフロアで働いていたり、ミーティングに参加したりしていた従業員に対してのみこの情報を開示している。

だが、ほとんどの従業員は共用エレベーターを利用し、打ち合わせ以外の用事で他のフロアへ移動する場合もあることを考えると、「最低限の責任」のみを負う両社のポリシーは無計画であるようにも思える。

一部企業では、従業員を従来のオフィス勤務へ戻す前に、感染しても会社にその責任を問わないことに同意する文書に署名させている。また、オフィスへ復帰する前にアプリやウェブサイトを通じて、現在の体調が悪くないことを申告させる企業もある。だが新型コロナウイルスは無症状であっても他人に感染する可能性があり、感染者は症状が出る数日前から周囲にウイルスをうつすことがある。

従業員が在宅勤務でしっかり仕事ができているのであれば、現状維持を検討すること。従業員の出社再開を検討する際には、以下の影響が出ることを念頭に置こう。

士気の低下


社内感染の恐れがある中で良い仕事をするのは難しい。従業員は自然と、同僚に症状があるかどうか、マスクの着用やソーシャルディスタンシングを守っているかを気にするようになる。雇用主と従業員の間には不信感が生まれるだろう。冒頭でも紹介したが、出社を安全に再開できると感じている従業員は約50%、会社が従業員を十分守っていると感じている従業員はわずか29%しかいない。
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編集=遠藤宗生

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