CBIエコノミクスは、もしWHOが定める「安全な」空気質ガイドラインを達成すれば、イギリスだけで、毎年16億ポンド(22億ドル)もの経済効果が生まれると分析しました。これは、国民健康保健サービスや、ソーシャルケアによる健康ケアのコストを抜いた額です。
分析は、大気汚染に関連した病気による死亡率と罹患率を下げることで、死亡者の減少、欠勤の減少、さらには病気を抱えて働く日数の減少にもつながると指摘しています。個人だけでなく、その友人や家族、地域がこの恩恵を受けるのに加え、健康な国は、こうした人々のスキルや経験をつなぎとめ、活用することによって、多大な経済的利益を生むことができます。
このように、健康状態の改善による連鎖的効果は非常に大きなものです。
大気汚染が原因となっている死亡率や病気を減らすことで、毎年、労働人口にして約17000人の早期死亡を防ぐことが可能です。
これらの人々がより長く生きて働くことで、イギリスは生産年齢人口を約40000人確保できます。体調不良が原因で早期退職する人が減少すれば、1年目で10億ポンド(13億5000万ドル)、将来的にはさらに大きな経済効果をもたらすと推定されます。
また、大気汚染を減らすことで、病欠、子供の看病のための休み、そして、病気によりベストな状態で仕事ができない日の日数が減少します。これは、毎年300万日分の労働日数がプラスされるのに相当します。その結果として、イギリス経済に約6億ポンド(8億800万ドル)の効果があると推定されます。
これは、イギリス経済だけではなく、労働者個人にも利益をもたらします。早期死亡や大気汚染に関連する病気が減少することで、イギリスの収入は毎年9億ポンド(12億ドル)増加するとみられています。
2050年までにゼロ・エミッションを達成したいワケ
2018年時点で、イギリスは、国が定める空気質の目標のいくつかを達成できず、WHOが推奨する「安全な」空気に関するガイドライン9分野のうち8分野で目標ペースに届いていません。
活動家たちは、2030年までのWHO空気質ガイドライン達成をイギリス政府に強く要請していますが、CBIエコノミクスの調査結果はこれを後押しするものとなっています。
調査の意義は、イギリスだけにとどまりません。ここで明らかになった事柄は、世界中の国の政府や地方自治体に対する警鐘と捉えるべきであり、すべての国民や市民の健康と福祉、そして環境を支えつつ経済を再生させるには、きれいな空気が絶対に欠かせないものであると考えなければなりません。
同様に、企業が受け取るべきメッセージもあります。大気汚染対策に取り組む行動は、従業員の健康だけでなく、収益にも良い効果をもたらします。大気汚染は国中の企業のバランスシートに打撃を与えているということが、分析から明らかになりました。これが、あらゆる業界で企業が持続可能で環境に優しい未来の実現を支持している理由であり、イギリスが2050年までにゼロエミッションの目標達成に向け、あらゆる努力を約束している理由です。
大気汚染軽減の必要性を顕著に示す、こうした経済的根拠を踏まえると、WHOの空気質ガイドライン達成がグリーン・リカバリー(緑の回復)の重要な要素であることは明らかと言えるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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