経済・社会

2020.10.07 07:00

きれいな空気の「経済効果」 大気汚染改善で22億ドルのインパクト

大気汚染の問題は世界的に深刻だ(Photo by Getty Images)

大気汚染の問題は世界的に深刻だ(Photo by Getty Images)

大気汚染が喫緊の課題として懸念されるなか、きれいな空気への改善が経済にもたらす効果について、調査が行われました。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・新たな研究によると、空気をきれいにすることで、イギリス経済に年間16億ポンド(22億ドル)の効果をもたらすことが明らかになりました。
・さらに、従業員の欠勤によって失われた300万日分の労働日数を取り戻し、毎年約17000人に上る労働者の早期死亡を防ぐことができます。
・この研究結果は、国や地方自治体が大気汚染対策を重視したグリーン・リカバリー(緑の回復)プランを立てる新たな動機になります。

新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン措置が、世界中の都市で空気の質に影響を与えたというニュースは、この数カ月ですっかりお馴染みになりました。

スモッグが消えた都市の写真、ロックダウン中にきれいになった空気を喜ぶ人たちの話。そして、人々が仕事に戻るにつれて、再び空気の汚染レベルが上昇しているというニュースを相次いで見るようになりました。

私たちの生活や仕事にこれほど大きな変化が起きることは、誰も望まなかったでしょうが、大気汚染の影響について、意識が高まったことは間違いありません。クリーンエア・ファンドの委託でYouGovが行った最近の調査によると、調査したすべての国(ブルガリア、インド、ナイジェリア、ポーランド、イギリス)で、大気汚染が現在の公衆衛生上の懸念事項の上位3位以内に入っています。

大気汚染がこれほど問題視されるのも当然のことで、世界保健機関(WHO)によると、環境大気汚染に関連する早期死亡者は世界全体で推定420万人で、心血管系疾患による死亡の19%、肺がんによる死亡の29%は、大気汚染が原因だとされています。このような健康への影響は、公衆衛生サービスのコストを上げるだけでなく、膨大な経済的コストも発生させます。世界銀行の推定では、2013年には、大気汚染の問題だけで世界経済に2250億ドルに上る労働所得の損失をもたらしたとされています。

ただし、これは新型コロナウイルス感染拡大以前のこと。パンデミック(世界的大流行)による悲劇のひとつは、大気汚染に最も脆弱な地域が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も受けている地域でもあるということです。つまり、大気汚染に対抗する力が不十分な地域が、影響を受けるのです。

それでも、希望はあります。ロックダウンの間に目にしたように、大気汚染はほぼ一夜のうちに改善することが可能で、汚染を改善することによって、人間の健康に与えると期待される効果は十分に証明されています。つまり、空気をきれいにすることによってもたらされる利益に目を向ける方が、現時点でより有益な考え方と言えるでしょう。

きれいな空気に値段をつけると?


きれいな空気がもたらす健康への効果は、多くの研究で証明されていますが、経済への効果にはこれまであまり注意が向けられていませんでした。そのため、クリーンエア・ファンドはCBIエコノミクスに委託し、イギリスでの大気汚染減少による経済的可能性に関して、初の分析を行いました。

この分析により、健康には値段は付けられませんが、きれいな空気には値段が付けられるということに、私たちは気づきました。
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文=Jane Burston, Executive Director, Clean Air Fund;Rain Newton-Smith, Chief Economist, Confederation of British Industry (CBI)

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