しかし、農夫山泉の株価がバブルだと指摘する声もある。
香港市場に上場した農夫山泉の株価は、9月15日の終値で36.15香港ドルをつけ、1週間前のIPOから68%上昇した。PERは69倍で、Tingyi(康師傅)やWant Want China(中国旺旺)など、香港市場に上場する食品・飲料メーカーの平均値の3倍以上となっている。
香港のアダマス・アセット・マネジメントのBrock Silversによると、農夫山泉は中国の上場企業としては珍しく売上・利益が予測可能であり、ビジネスモデルも確立されている点が投資家から評価され、株価が高騰しているという。
一方で、彼は次のように警鐘を鳴らす。「現在、中国ではIPOフィーバーが起きており、企業も投資家も波に乗り遅れないことに必死だ。農夫山泉の株価が高騰している背景には、浮動株が少ないことや、コーナーストーン投資家(長期保有を行う大口の投資家)が多かったことが挙げられる。しかし、個人投資家にとって現状の株価はリスクが高い」
創業者のZhongは農夫山泉株の84%を保有している。同社は少数の株主が株式の大半を保有し、浮動株が少ないため、価格変動が大きくなる可能性がある。同社の上場申請書にも、「投資家は取引に当たって注意が必要だ」と記載されている。
Zhongは、上海市場に上場するワクチンメーカー「Beijing Wantai Biological Pharmacy」の株式の75%も保有しており、2社の持ち分を合計すると彼の保有資産は537億ドルに達する。これは、テンセントのポニー・マーに次ぐ金額で、アリババ共同創業者のジャック・マーの505億ドルを上回っている。
昨年の農夫山泉の売上高は前年対比17%増の240億元(約3730億円)で、このうちボトルウォーターの売上が3分の2を占めた(残りはジュースや紅茶飲料だった)。利益は、前年対比21%増の50億元だった。中国の飲料水市場における同社のシェアは20%を超える。