College Boardによれば2018年には「SAT」を210万人以上が受験している(Shutterstock)
アメリカでは、経済格差の問題は、人種問題にも密接に結びついており、今回の原告団のうちには、黒人やヒスパニック系の学生が多い「コンプトン統一学区」も含まれている。
「SAT」を運営するCollege Boardの報告「SAT Suite of Assessments Annual Report California」によれば、2018年に高校を卒業してテストを受けたカリフォルニア州の生徒約26万人のうち、白人の生徒の44%、アジア系アメリカ人の生徒の53%が1600点満点のうち1200点以上のスコアを獲得したのに対して、アフリカ系アメリカ人の生徒のうち10%、ラテン系の生徒のうち12%しか、このレベルのスコアに達しなかったとされている。
テスト結果の提出「任意」も禁止のワケ
実は、カリフォルニア大学は2020年の5月に、入学試験における「SAT」や「ACT」のスコア提出を段階的に廃止することを決定していたが、2022年秋までの対応はキャンパスによって差があった。
バークレー校、アーバイン校、サンタクルーズ校の3つのキャンパスでは、スコア提出を一切受け付けない決定を下していたが、デービス校、ロサンゼルス校、マーセド校、リバーサイド校、サンディエゴ校、サンタバーバラ校では、学生のスコア提出は「任意(optional)」となっていた。
今回の判決で、カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所は「SAT」や「ACT」のスコアを考慮することを禁止する仮差止命令を出しているが、ここにはもちろんスコア提出を「任意」とする場合も含まれている。
なぜ「任意」であっても問題が残るのであろうか。
「任意」という形で試験が行われる場合、カリフォルニア大学は、第1次審査を共通テストのスコア以外の要素に基づいてすべての志願者に行い、その後、テストのスコアを提出した学生には第2次審査を行う計画であった。
しかしそうすると、裕福でテストを十分に活用できる学生にとっては、合格を掴み取るための「2度目の機会(second look)」が与えられることになるが、「SAT」を十分に受けることできない学生たちにとっては入学へのチャンスが平等に与えられているとは言いがたいということになる。
米ニュースチャンネルのCNNは「University of California System can’t use SAT and ACT tests for admissions, judge rules」のなかで、高等裁判所判事のブラッド・セリグマンが「恵まれない学生や、テストにアクセスできない障がいを持つ学生には『2度目の機会』が否定されることになる。したがって、結論としてはテストは全面的に廃止になる」と述べたと伝えている。
また今回の裁判でとりわけ重要な争点となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、通常であれば年に7回開催されている「SAT」テストのいくつかの日程がキャンセルとなり、またテスト会場も限定されたことで、特に障がいを持つ人々が「SAT」を受験することが困難になってしまったという問題だ。奇しくもコロナ禍が社会的な不公正を顕在化させた形となった。