米国における大学の価値、コロナ禍で浮き彫りに

ハーバード大学 / Getty Images

新型コロナウイルス感染症が突如発生し、私たちの働き方や生活は大きく変化した。教育の世界も例外ではない。

大学生たちは、パンデミックによって多大な犠牲を強いられている。オンライン授業は、授業料を支払った見返りとして体験できるキャンパス内での学びと比べて、質が低いことも少なくない。

春学期は事実上、終わりを迎え、秋からの新年度が着々と近づきつつある。しかし高等教育の世界では、回答よりも疑問点のほうが多いのが現状だ。大学やカレッジは、キャンパスでの授業を始められるのだろうか。あるいは、新年度を迎えても、何週間や何か月も遠隔教育を続けざるを得ない学校が出てくるのだろうか。

しかし、それより重要なのは、教育のために正規の授業料を支払っている学生たちは、その見返りとして行われる授業に満足できるのかということだ。

ハーバード大学はオンライン授業で新年度をスタート


この問いがかつてないほど重要になってくるのは、「アイビーリーグ」と呼ばれる、授業料の高い北東部の名門8大学だ。学士号取得にかかる授業料は、インディアナ州の寝室が3つある平屋住宅1軒分に相当する。ハーバード大学を例にとると、2019年の年間授業料は、学資援助なしの場合で4万6340ドル(約500万円)。授業料や寮費、食費、その他経費を含めた納付総額は6万7580ドル(約720万円)にのぼった。

ハーバード大学のアラン・ガーバー学長が記した2020年4月付けの公開書簡によると、2020年秋学期は、少なくとも遠隔授業として始まる可能性が非常に高そうだ。

教育コンサルティング企業H&Cエデュケーションの最高経営責任者(CEO)ピエール・ユゲによれば、オンライン授業は、学生が授業料の見返りとして期待する体験とはかけ離れている場合が多く、大学側がいくら努力してシラバスや授業内容を改善しようとしても、それは変わらないという。これを念頭に、来年度の授業料設定を変更する大学が出てくるとユゲは見ている。

多額の寄付金が集まるアイビーリーグなどの超一流大学は、大半のカレッジや大学ほどは経済危機による影響を受けないとユゲは予想している。また、一流校のほとんど、とりわけアイビーリーグはすでに、「need-blind」という方針を掲げている。つまり、入学志望者の合否判定は実力だけを見て行われ、学費支払い能力の有無は一切関係ないという方針だ。

「そういった一流校では、学生が経済的ニーズを示せば100%対応している」とユゲは説明する。「(一流大学は、)ほかのほとんどの大学やカレッジほど、授業料に依存していない」
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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