「SAT」や「ACT」とは、大学進学希望者の学力を判定する全米共通テストで、それぞれ民間の非営利機関であるCollege BoardとACT Inc.によって運営されている。
アメリカの多くの大学が出願時にこれらの共通テストの提出を義務づけており、College Boardによれば、2018年には「SAT」を約210万人以上が受験している。
なぜ、いまアメリカでは、全米共通のペーパーテストの廃止が議論されているのだろうか。
富裕層に有利なテストのあり方に批判
一般的にアメリカの大学入試では、高校のGPA (Grade Point Average、成績指標値)、本人のエッセイ、推薦状に加えて、「SAT」などのペーパーテストのスコア提出が求められており、これらが総合的に評価されて合否の判定がなされる。
「SAT」の場合は、英語力をみる「Evidence-Based Reading and Writing」と数学の力をみる「Math」の2つのセクションから、合計1600点満点で構成されている。任意で追加の「エッセイ」を受験することもできるが、基本的にはマークシート式のテストだ。
このようなペーパーテストは、一見すると公平で客観的な制度のようにも思われるが、「SAT」や「ACT」は有料でかつ繰り返し受験できるため、テスト対策にお金をかけられる富裕層に有利に働き、テストを十分に受けることができない貧困層や障がい者にとっては不公平であるとの批判が以前から強まっていた。
低所得の家庭の学生と比較した場合、裕福な家庭の学生は「SAT」と「ACT」で高いスコアを出すことはいくつかの調査によって指摘されている。
例えば、教育系メディアのInside Higher Edによる2015年の分析「SAT scores drop and racial gaps remain large 」では、「SAT」の各パートの平均スコアが最も低かったのは、世帯年収が2万ドル未満の学生たちであり、最高得点は、世帯年収が20万ドル以上ある学生たちのものだったと明らかにしている。
今回、仮差止命令が出されたカリフォルニア大学は、2019年12月に、共通テストのスコアを入試で考慮することは、人種や家族の収入、あるいは障がいなどの理由で志願者を違法に差別する結果となり、カリフォルニア州法で保障されている学生の権利を否定するとの趣旨で、訴訟を起こされていた。