ファッション業界はパンデミックのはるか以前からその「欠陥」を批判されてきた。デザイナーらは継続的に売り上げを増やすため、コレクションを次々と発表し、生産を増やすと同時に、価格を大幅に下げて品質や事業の持続可能性を犠牲にしてきた。
だがパンデミックにより、経済・環境・人的要素の全てが緊密に関係していることが浮き彫りとなった。企業の中には、事業規模の大小にかかわらず、既に変化を起こし、持続可能性達成の取り組みを強化したり、少なくともマーケティング活動の焦点を変化させたりしているものもある。
私たちはH&Mグループのサステナビリティー責任者、アンナ・ゲッダにインタビューし、ファストファッション業界がコロナ後の世界でのサステナビリティーについてどう考えているのかについて話を聞いた。
──ファッション業界は新型コロナウイルスのパンデミックにより深刻な打撃を受けました。H&Mにはどのような影響があり、過去の危機とはどのように違いますか?
ゲッダ:この危機はとても急速に起きた。新型コロナウイルスは、私たちが近年経験した中でも最も大きな問題の一つで、私たちのような大企業でも切り抜けるのが難しかった。大きな問題の一つは店舗の閉鎖だ。世界5000カ所以上の店舗の80%が閉鎖していた時期もある。これは、売り上げと安全策、サプライチェーンの面で大変だった。
──ファストファッション業界ではパンデミックによりどんな変化が起きているのでしょう?
ゲッダ:各社には事業面だけでなく、人々の期待や理想、価値観の面でも大きな影響があった。人々は自分の人生で最も大切なものは何かを考えるようになったが、それがどのようにファストファッション業界に影響するかはまだ分からない。
今予測できることとしてはまず、ビジネス環境の変化がある。当社では多くの店舗が閉鎖され、売り上げは大幅に減ったが、同時にデジタル化は急速に進んだ。かなり前から広く予測されていたデジタル移行はこの危機で加速し、今後も続くことは間違いない。これにより、ファッション業界のさまざまな企業が影響を受けることになる。
また、顧客の期待や行動も変化すると考えている。人々の買い物の仕方が変わるだけでなく、購入の決断も個人の経済的な懸念に影響されるようになる。デロイトの近年の調査によると、世界のミレニアル世代の77%、ジェネレーションZ世代の66%が自分の現在の経済状況を心配している。経済状況は、当然ながら行動にも影響を与えている。
それと同時に、環境の持続可能性や、雇用創出などの経済復興策が盛んに議論されている。レジリエンス(回復力)が高い多様な事業モデル、現在よりもはるかに循環型の事業モデルへの移行が真に必要とされている。