「パラダイスでは物足りない」ピクサーを飛び出した日本人クリエイターの軌跡

堤大介 / Photo by Daisuke Miyake


そんなトンコハウス映画祭の第2回目が、2020年8月にオンラインイベントとして開催される。今回は世界で活躍するクリエイターを迎えてのトークライブや絵のワークショップも多く企画され、元ピクサーのリー・アンクリッチ監督も登場予定だ。
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「リーは去年ピクサーを辞めて、ちょうど新しいことをやろうとしてるタイミング。彼みたいな人が次は何をやるんだろうってすごいワクワクしますよね。スケッチトラベルと同じで、自分自身が楽しいことからスタートしてるからこそ、どんなに大変でもパッションを持ち続けられる。映画祭を通じておもしろい人とたくさん繋がれるし、こういうコミュニティをもっと広げていきたい。それはとてもやる価値があるものだと思ってます」



『第2回トンコハウス映画祭』8/21~30までオンラインで開催。トンコハウスの作品のほか、堤とロバートがインスピレーションを受けた世界のアニメ16作品をオンラインで上映。一緒にアートを楽しめるワークショップやスペシャルトークLIVEも実施予定。

反対意見にも好奇心を。クリエイターが今できること


トンコハウスのテーマは「好奇心を刺激する」こと。アニメーションやストーリーなどあらゆる表現を使ったそんな仕掛けが、作品にもイベントにもいっぱい散りばめられている。
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「好奇心の究極は、自分が反対してる意見に対しても好奇心を持つことだと思うんです。今は対話できる場所がどんどん減ってきている。暴力であろうと、システムや空気であろうと、相手が言い返せないようにすることは本当の意味でのバイオレンスだと思う。もちろん自分の意見はしっかり持たなきゃいけない。でも相手の意見も好奇心を持って聞く。それがないと人類は生き延びられないんじゃないかなって思います」

新型コロナウイルスの流行によって、同じ街、同じコミュニティの人同士でさえも簡単には会うことが叶わなくなった。すると、「この人はどんな生活をしてるんだろう」「自分だったらどう思うだろう」とみんなに対して思いを馳せることがスタンダードになってくる。見えないものや理解できないことに対して、知ろうとする好奇心を持つことが、これから益々重要になってくると堤は語る。

「そこで養わなければいけないのは、やっぱり想像力。それが欠落していると、国や文化、肌の色が違う人、性的指向が違う人、色々な人に共感することができなくなってしまう。僕らは普段から何かを作っていて、現実にないものはイマジネーションでどれだけ膨らませられるか、どこまでリアルに考えられるかを突き詰めている。だからこそ、僕ら作り手が想像力とか好奇心を駆り立てるようなものを作っていくことが、すごく大事なんじゃないかと思ってます」


(c)Tonko House Inc. 

“WHY”の哲学から生まれたやさしいクリエーションがもたらしてくれるのは、全ての源になる“好奇心”。自分が知らないことや違う意見にも好奇心を持って知ろうとすることは、何においてもプラスの一歩になるだろう。

好奇心に溢れた子どもたちのように、知らないことの全てに興味を持ち、出会う人みんなに関心を持つ。もしそんな大人がたくさん増えたら、いつか現実もやさしい世界になっていくかもしれない。そんな想像を膨らませながら好奇心をくすぐられる機会が、今の私たちには必要なのかもしれない。

文=水嶋奈津子

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