そこで、僕たちはデモ申請をして、《LOVE IS OVER》というデモを行うことにしました。
200人近くの警察官が僕たちの行進を見張りに来てくれて、レスリー・キーさんや篠山紀信さんが路上から写真撮影もしてくれました。
深夜は屋内で飲み続け、早朝屋外に出たので、エリイも新郎も僕たちはみんな酔っぱらってましたね。
最終目的地のロバート・インディアナのパブリック・アート《LOVE》までデモをしたんです。それまでの路上パフォーマンスの中でも最も思い出深いものになりました。
──確かに他の作品とはレベルが違いますよね。今後の作品も「ストリート」に焦点を当てた、公共空間の概念を押し出したものになりそうでしょうか。
確かに僕らは公共空間の物理性や、都市主義の力学に興味をそそられています。オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、東京は常に建設ラッシュの中にあり、進化し続ける都市でした。
こうした街の大きな変化をテーマにしたのが、「スクラップアンドビルドプロジェクト」です。
まず、「歌舞伎町振興組合ビル」を丸ごと使った『また明日も観てくれるかな?』という個展です。
建て壊し予定のビルの中で2週間開催し、展示以外にも他のアーティストと共にパフォーマンスイベントを何度か行いました。終了後には中に作品を残したまま、ビルと共に解体してもらうというものです。
各フロアの中央を真四角にカットし、そのまま真下の1階に積み重ねたのが《ビルバーガー》です。
《Sukurappu ando Birudo Project “Build-Burger”》2016 3階分のフロア、事務用品、空気調節装置、家具、照明器具、カーペットなど Photo: Kenji Morita Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production
こうした大胆な展覧会は、コマーシャルギャラリーや美術館ではできません。結果、アーティスト・ランのイベントとしてDIYでやりましたが、約一万人もの人が集まってくれました。
そこで解体された作品や建物の残骸を使ったプロジェクトが、僕たちのスタジオを変形させた個展『道が拓ける』です。建物の中を壊して、1階の床面に瓦礫や作品を埋め立て、アスファルトで覆って、24時間誰でも自由に出入りができる《Chim↑Pom通り》を作りました。
入口の扉を壊し、周りの公道に繋げる事で、プライベートな場を公共の場にしてみたんです。
──最後に、今日のアートやアーティストの社会的役割はどのようなものだと思っているか教えてください。
「公共」の意識が強くなればなるほど、個というものは埋もれていきます。
例えばですが、僕は最近のアートフェアには刺激を受けません。それは、買いやすい、同じサイズの作品だらけが並び、一つ一つの作品の特殊性に向き合うのが難しくなっているから。
良い作品であっても周囲に埋没しがちで、それは社会でも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
今のアーティストのひとつの役割は、「極端な個の振り幅」として存在し、個を機能させることだと思っています。
僕たちの作品と直接的に関係があってもなくても、人々のアートに対する反応というのは、アーティストの役割により意味をもたせるものだと感じています。