──人間の限界への挑戦や、自然界を探索することなど、そうしたアイデアのインスピレーションはどこから来るのでしょうか?
これまで紹介した作品を作っていたのは、ちょうど街のエンターテインメントを消費する事に飽きてしまった頃でした。与えられるものではなく、自分たちで街の可能性を開発しようとしていた時に、例えば夜になると渋谷に出て、ただただ通りを観察していました。
ネズミがモチーフになったのはそんな流れです。
東京の街に生息していたネズミが駆除業者から「スーパーラット」と呼ばれていたのは、毒への耐性が出来て、普通の駆除方法では死ななくなったから。
大都会で人間と共に生きるために、人間が仕掛ける罠を避ける方法を身につけて進化を遂げたネズミなんです。
嫌われ、殺処分の対象になり、だけどその環境に適応しながら、敵と共生する。
それをどう作品として形にするか考える過程で、プロのネズミ駆除業者でも難しいのなら、どんなやり方で捕まえられるのか模索しました。
そこで、スーパーラットの生態を観察して、網を使うというとてもシンプルな方法に行き着きました。
その捕まえたドキュメンテーション込みで作られたのが、2006年の《スーパーラット》という僕らのデビュー作品です。恐怖心もあったけど、彼らのサバイバル能力を尊敬しましたね。
《SUPER RAT -Scrap & Build-》2017 生きている数匹のネズミ、新宿で捕獲したネズミの剥製、解体された歌舞伎町のジオラマ、土、石膏、キタコレビルで発掘した猫の骨、塩ビ板、鉄製フレーム、ネズミの餌、水、コンクリートガラ、映像、216 x 直径105cm 制作協力:西村健太、楊俊彦 Photo: Kenji Morita Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production
──Chim↑Pomはこれまでに国際的な賞も受賞して、NYの「PS1」にも作品を出展しています。《スーパーラット》はChim↑Pomにとって象徴的な作品になりましたか?
そうですね。2011年の東京電力による福島第一原発事故をきっかけに、「スーパーラット」のコンセプトはアップデートされました。
放射能に汚染され、アイデンティティを見つめ直し、生活様式を考え直さなければならない時期でもありました。
毒の中で生きる逞しさは、2006年には僕らの自画像でしたが、この頃には日本人全体の象徴として「スーパーラット」のコンセプトは考えられました。
《REAL TIMES》2011 ビデオ (11’ 11’’) Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production